トヨタ初のBEV「bZ4X」が「KINTO専用車」として登場した合理的理由

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トヨタはBEV「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」を「KINTO専用車」という新しい販売手法で展開する。その背景には何があるのか。

BEVとは何か

bZ4X(画像:トヨタ自動車)
bZ4X(画像:トヨタ自動車)

 トヨタの新たなバッテリー電気自動車(BEV)シリーズの第1弾となる「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」。この製品には新しい技術だけではなく、「KINTO専用車」という新しい販売手法が取り入れられた。これまで主流だった売り切り販売から、サブスクリプション(サブスク)販売へと切り替えた背景には、一体何があるのだろうか。

 トヨタはハイブリッド自動車(HV)において、世界に先駆けて研究・開発を行い、今なおリーダー的立ち位置にいるが、そんな同社がBEVに着手したのは最近のことだ。

 BEVは、モーターのみを動力源とする自動車を指し、エネルギー源は電気のみとなる。大気汚染や地球温暖化といった地球環境問題の解決に大きく貢献すると期待され、この問題に対して特に関心が高い欧米諸国においては、名だたる自動車メーカーがこぞって研究・開発・販売を進めている。

 ちなみに、EVは電気をエネルギー源としてモーターで走行する、いわゆる「電気自動車」全般を指す。そんなEVにはさまざまな種類がある。

 太陽光パネルを搭載した「ソーラーカー」。主に水素をエネルギー源とした燃料電池を搭載した「燃料電池車(FCV)」。更に、富山県と長野県を結ぶ「立山黒部アルペンルート」にて唯一運行している(2022年6月時点)、電車のように架線から電気を取り入れて走行する「トロリーバス」もEVの一員だ。

 EVというカテゴリーは、上記のほかにも多くのジャンルを抱えている。BEVは、そのなかのひとつというイメージだ。

ハード面とソフト面の双方で新境地を切り開く

bZ4Xのカラーバリエーション(画像:トヨタ自動車)
bZ4Xのカラーバリエーション(画像:トヨタ自動車)

 これまで、トヨタはBEV市場で後れを取ってきた。例えば、過去トヨタは一部のふたり乗りの小型BEVを除き、BEV専用プラットホームを販売してこなかった。

 ところが、2021年4月の上海モーターショーで、ついにトヨタが動いた。トヨタが今後展開する新たなBEVシリーズ「TOYOTA bZ」、その第1弾として「bZ4X」のプロトタイプが発表されたのだ。それから1年後の2022年4月、日本向けモデルの発売が正式に発表された。トヨタがBEVに注ぎ込んだ新しい技術の結晶そのものである。

 だが、トヨタがお披露目したのは新しい技術を具現化した“ハード面”だけではない。商品の売り方、すなわち“ソフト面”においても新しい手法を導入した。

 それが、トヨタの子会社が運営する新車のサブスクサービス「KINTO」のみでの販売だ。つまり、従来主流であった自動車の売り切りの手法からついに脱却したのだ(本記事では、特記がなければ自動車の販売手法はあくまでも個人向け販売のものを指し、法人向け販売は対象外とする)。

 なぜ、トヨタはbZ4Xをサブスクのみで販売するという革新的な販売手法を採用したのか。そこには、買い手と売り手の双方が抱えるリスクを回避することによって、BEV市場での巻き返しを図ろうとする思惑が隠されていた。

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