高すぎる「中韓の壁」越えられる? 日本最大級の「蓄電池工場」が岡山県南端に建設されるワケ
岡山県南端に蓄電池製造拠点が開業予定

日本郵船や今治造船など大手企業と連携し、世界初となる電気運搬船の開発に向け取り組むパワーエックス(PowerX、伊藤正裕最高経営責任者)――。そんな同社が、岡山県南端の玉野市に日本最大級の蓄電池組立工場「Power Base」を建設する。バッテリーの年間生産量は最大5ギガワット時(GWh)を想定。2023年にプロトタイプの生産、2024年から本格的な生産に入ることを予定している。
パワーエックスは「ゾゾスーツ」などの開発に携わり、ZOZOの最高執行責任者(COO)も務めた伊藤正裕氏が立ち上げたスタートアップだ。同社はSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)経営の適用といった、環境への取り組みが企業価値に直接連動する時代が近づくなか、海上物流でも温室効果ガス(GHG)の排出削減に向け、大型蓄電池を搭載したハイブリッド船や完全電気推進船の需要が高まってくると判断。
2021年に、船舶の動力源としても使用できるコンテナ型蓄電池などを生産する工場の建設と、日本近海に設置した浮体式洋上風力発電所から陸上へ電気を運ぶ電気運搬船「Power ARK」を発表した。
Power ARKの実現に向けては、日本最大の造船会社である今治造船や大手船社である日本郵船などと協力。電気運搬船や電気推進船の本格的な導入に向け、必要なシステム技術や船上への蓄電池の搭載、プロトタイプ船を使った社会実証実験など、さまざまな取り組みが構想されている。
敷地面積は東京ドーム0.6個分

このPower ARKに積載する蓄電池の製造拠点が、2022年6月23日に建設を発表したPower Baseとなる。
蓄電池組立工場の敷地面積は約2万8272平方メートル(東京ドーム0.6個分)で、蓄電池生産ラインに加えて、研究開発センターやオフィススペースなども敷地内に置く。人材採用においては、エンジニアやオペレーター、技術者など、百数人の雇用創出が見込まれている。
Power Baseはセルを大量に仕入れて、使用目的に沿った製品に仕上げる「パッケージング工場」となっており、生産するバッテリーは
・電気自動車(EV)用急速充電器(容量300kWh)
・コンテナ型グリッド電池(3000kWh)
・船舶用蓄電池(3000kWh)
・住宅用蓄電池(10kWh)
の4種類を用意することで、多様なニーズに対応する。工場はオートメーション化することによって大量生産とコスト削減を図り、蓄電池の価格を現状の1kWh当たり10万円台から4万円台まで下げることを目指す。
建設資金はシリーズAラウンドの前半として、2022年5月にSpiral Capitalや日本瓦斯、三井物産、三菱UFJ銀行などからの出資を受けて調達した41.5億円の一部を充てる。