存続危機の地方航路 青森「シィライン」2023年廃止に見る、自治体間対立の闇
2022年5月、青森市とむつ市脇野沢、佐井村を結ぶ航路事業を行うシィラインが2023年3月での航路廃止を決めた。その背景にあるものとは。
自治体の対立と冷めた熱意
この苦境に最後の打撃を与えたのが、新型コロナウイルス感染拡大の影響だった。
2019年度に5905.5人(小学生は0,5人換算)だった状況数は、2020年度には1852人に激減。乗船率は2%という悲惨な数字になった。これによって、むつ市と佐井村は2022年度をもって赤字補填を打ち切ることを決定。航路の廃止が決まった。
今後、問題になるのは廃止後の代替交通機関の整備だ。2005年に航路存続が危ぶまれた際、青森県は公共交通機関のない脇野沢~佐井に、NPOなどが格安で運営する車による移動を検討していた。
脇野沢から先は、むつ湾フェリーで対岸の蟹田へ。そこから、青森までデマンドタクシーを走らせるという代替案を提示している。いずれにしても、現在の航路より不便になるのは確かだ。
ただ、廃止に対しては地域によって温度差がある。2022年6月に行われた住民説明会で、脇野沢~青森市が往復8時間になることへの懸念が寄せられた一方、佐井村は
「(村内の)牛滝の生活環境も昔と大きく変わり、船がなくなっても不自由には感じない」
と廃止を受け入れる態度を示している。
代替交通機関である、むつ湾フェリーの動向も危うい。むつ市では支援は県が行うべきという態度をとっており、近い将来求められる新造船への支援も否定している。
このように、航路が廃止されるに至った背景には補助金をどのように分担するかをめぐる自治体の対立があり、維持に向けた熱意も冷めていった様子が見て取れる。
たとえ赤字で利用者が少なくとも生活に欠かせない交通機関を維持するため、支援体制をどう構築するかの教訓がここからは見て取れる。