第二の「あをによし」登場? 近鉄が開発する究極の「二刀流電車」をご存じか
二刀流電車の導入に向けた課題

二刀流電車の実現や列車の運転に向けては、課題も多い。
近鉄の一般的な通勤形電車は1両あたりの長さが先頭車、中間車とも2万720mm、幅が2800mm、高さが4150mmに対し、第3軌条車両の7000系、7020系は、長さが先頭車1万8900mm、中間車1万8700mm、幅が2800mm、高さが3745mmと異なる。いずれも4ドア車で、二刀流電車を実用化させるには、車両の規格を7000系、7020系に合わせる必要がある。
また、大阪メトロは中央線のホームドア設置工事に着手していないが、近鉄が仮に特急形電車を入れる場合は、ホームドアを見据えた設計が求められよう。
夢洲~近鉄各線間へ向かう列車を実現させるには、両線とも急行運転をして、途中駅で各駅停車を追い抜かないと需要が得られないだろう。例えば、阪神電気鉄道の阪神なんば線九条~近鉄奈良線生駒間の快速急行は約30分に対し、中央線九条~けいはんな線生駒間の各駅停車は約32分である。
けいはんな線の場合、新石切で上下線とも追い抜きが可能である。この駅の1番線は下り生駒・学研奈良登美ヶ丘方面、3番線は上り長田・コスモスクエア方面のホームに対し、2番線は主に回送や試運転列車などの待避線として使用され、上下線の列車が停車できる。
“ドリームトレイン”が実現なるか

近鉄によると、現時点、2番線にホームセンサーを設けていないので、旅客列車の停車ができないという。また、1番線側に第3軌条が敷設されているため、感電事故防止の観点から柵が設けられ、乗降は2番線に限られる。二刀流電車の導入が決まれば、2番線にホームドアを整備することで、1番線側、3番線側の両方で乗降が可能になるだろう。
一方、中央線は森ノ宮の下りホームに限定される。物理的に列車の待避が可能な1番線は日中に回送列車を留置し、車両不具合などのアクシデントが発生した際、すぐ旅客列車に就けるようにしている。このシステムは御堂筋線のなかもず、谷町線の八尾南、四つ橋線の北加賀谷などにもあり、大阪市営地下鉄時代から続く“伝統”のひとつだ。今後、森ノ宮が列車の追い抜きに対応いただけるかがカギになる。
惜しむらくは、長くても6両編成でしか運転ができないこと。当時の東大阪線開業時、荒本―生駒間はホームの長さを8両編成分確保し、将来の増結を想定していた。しかし、路線名がけいはんな線に変わると、ワンマン運転に伴うホームセンサーならびに、安全柵を設けたことでホームの長さは6両編成分に変更されたのだ。念のため、大阪メトロに問い合わせたところ、中央線のホームも8両編成に対応していない駅があるという。
近鉄が描く“ドリームトレイン”が実現することを大いに期待したい。