地球温暖化説を疑え 喧伝される「脱炭素」で得をするのは誰か? 今こそ考えるべきだ
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IPCCの主張とは
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2021年8月発行の第6次報告書で、人間活動の影響で地球が温暖化する可能性には「疑う余地がない」と断言した。
IPCCは、全球気候モデル(GCM)という大規模なコンピューター解析の結果を「科学的」根拠として利用している。図は世界の平均気温推移と今後の予測を示しているが、黒い太線が示す実測結果は、さまざまなシナリオの予測範囲の下限にあり、かつ最近10年間ではほとんど上昇していない。
しかし、IPCCはその理由を明確に説明することなく「温暖化は疑う余地がない」と断言した。GCMの信頼性と有用性については科学会でも論争がある。興味があれば、
・地球温暖化の予測は正しいか?(杉山大志、キヤノングローバル戦略研究所)
・誰にでもわかる気候モデルの問題点(Judith Curry、地球温暖化政策財団)
という論文を一読いただきたい。
GCMによる評価は不適切
GCMはコンピューター支援工学(CAE)のツールのひとつであり、一般的なCAEは広範囲に利用される。ただ、解析結果と実測結果が合わないことに悩むケースが多く、GCMは0.5度レベルの絶対値を評価するには不適切だ。その理由は、次のふたつだ。
●有限要素法
CAEは有限要素法とも呼ばれ、難解な微分方程式を近似的に解くために、解析の対象物を小さな要素に分割して、単純な関数で表す手法だ。近似すれば解析と実測は合わなくて当然だ。なお、地球全体を扱うGCMの1要素のサイズは通常100~200km平方、高さは1kmだ。100kmどころか1km先でも天気は変わる。
●実測による検証
通常は精度を上げるために、実測結果に合わせて数値モデルを修正する。これを検証と呼ぶ。検証データのないCAEに関する論文は信用されない。一方、気候現象は人為的に変更して解析結果を検証することができないため、GCMは過去の気象現象を再現できるように修正されているが、「過去の延長線上に未来がある」とは限らない。
46億年の地球の歴史の中で、全球凍結や周期的な寒冷化が発生した、という仮説を説明する証拠はあり、まじめに議論されている。
脱炭素のコストとは
脱炭素には多くの未解決課題があるが、そのことはあまり議論されていない。
気候変動対策の費用対効果を試算した米国政策提言フォーラム(AAF)は
「差し迫る気候変動危機のためにはコスト度外視で対応するべき、との議論があるが、気候変動だけが危機ではない。政策立案者は、費用対効果を考えて政策を決定すべきだ」
「米国グリーンニューディール政策の費用は効果の数倍にもなる」
と語っている。
またマッキンゼーは、地球の温度上昇を1.5度以下に抑えるシナリオ実現には、2021~2050年までに総額275兆ドル、年間平均支出は世界国内総生産(GDP)の約7.5%と試算した。樹脂原料のナフサやアスファルトも原油から製造され、その過程でガソリン、灯油や軽油も一定割合で製造されてしまうが、無害化処理技術がないため、有効活用する必要がある。
再生可能電力は不安定なエネルギー源であり、水力、原子力等の安定した電力で補完しなければならない。太陽光パネルや風車は製造時にCO2を排出し、その寿命は20~30年だが、リサイクルや廃棄に関する規制がない。
さらに、太陽光パネルの製造は中国、風車の製造は中国、欧州、米国に集中し、日本の産業振興にも雇用の増加にもほとんど寄与しない。しかも2050年までは、高額な再エネ賦課金を払わなければならないのだ。
COP26で署名しなかった日本メーカー
新興国の炭素中立化は、先進国の10~20年遅れを目指している。2026年には欧州で「炭素国境調整」が始まるが、対象は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力に限られる。ESG投資についても客観的な判断基準がなく、脱炭素への偏重がイノベーションを阻害し、経済全体の発展を阻害している。
植物はCO2を吸収して成長するため、植物由来の燃料や原料は炭素中立と扱われる。CO2回収・貯留も同じ考え方で、排出したCO2を、貯蔵あるいは再利用して大気中には放出しない技術だ。国際エネルギー機関(IEA)は、CO2削減の現実的な手段として期待している。日本に残された脱炭素ビジネスのチャンスだ。
国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)では、
「主要市場で2035年、世界全体では2040年までに、全ての新車販売をBEVなどゼロエミッション車にする」
という共同声明に、フォルクスワーゲン、BMW、ルノー、ステランティスと、全ての日本車メーカーは署名しなかった。