100年間、宙ぶらりんのロンドン地下鉄「延伸」 コロナの計画頓挫で行く末どうなる?

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東京メトロ2路線の延伸が報道された日本・東京。鉄路延伸という大事業は、沿線のまちづくりに多大な影響をもたらす。19世紀に世界初の地下鉄を開通させた英ロンドンのケースはどうか。

開通により見込まれていたもの

ロンドンの地下鉄のベーカーストリート駅(画像:写真AC)
ロンドンの地下鉄のベーカーストリート駅(画像:写真AC)

 イギリス政府が地方の公共交通機関拡充を掲げているため、ロンドン交通局が求めるだけの大規模な資金援助は可能性が低い。さらに、ジョンソン首相はロンドンでは北部の地下鉄延伸に興味があるとしていて、なおさらベーカールー線延伸の早期実現は難しい。

 プロジェクトのキャンセルでは、開業後40年の間に見込まれていた64億ポンドの経済がふいになる。すでに投じられた資金はあるし、土地は確保するなどしていた。開通すれば31億ポンドの費用は回収可能なのだが。

 ベーカールー線の延伸が実現すれば、数万人の雇用の創出、数万件の家が建つことも見込まれていた。

 ロンドン市によると1ポンドをロンドン地下鉄へ投資するとしたら、55ペンス(0.55ポンド)はロンドン市外の労働者に支払われるのだという。これはロンドンだけでなく国全体を潤すことになる。

 一例だが、ベーカールー線の新しい車両をつくることになれば、ヨークシャー州のグールが潤う。ベーカールー線では1972年の古い車両が使われていて、電力不足で犯罪抑制に効果的と言われるCCTV(防犯カメラ)も付けられない、乗客情報のスクリーンもないもの。ただ新型車両の切り替えは業績悪化で少なくとも20年はないという。

 ロンドン市長は、「国のパンデミックからの回復はロンドン次第。首都の交通網への適切な資金提供が必要不可欠」と訴えている。

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