100年間、宙ぶらりんのロンドン地下鉄「延伸」 コロナの計画頓挫で行く末どうなる?
資金不足でとん挫
ロンドンには、新型コロナウイルスの感染拡大(パンデミック)により運命が大きく変わってしまった延伸計画がある。2017年にロンドン交通局が発表した「2020年の建設許可の取得に向け、2028-2029年に開業予定」だったベーカールー線だ。早くとも2030年台まで日の目を見ることはないという。
一時は95%減まで落ち込んだ地下鉄乗客数により深刻な赤字に陥ったロンドン交通局。それまで運営予算の72%が運賃収入という優秀さだったが、それが裏目に出た。
ロンドン市長のサディク・カーン氏は2021年末に同計画のとん挫を告げるとともに、長期投資の形で資金を提供しない政府を非難した。
2022年5月30日(月)のプレスリリースによれば、乗客数はパンデミック前の70%に戻ってきている。しかしリモートワークの普及で完全に戻ることは期待できない。
現在ロンドンでは900万人以上の人口を抱えるが、2030年までに1000万人以上に増加すると予想されるため、今より乗客数が戻ることは考えられる。しかししばらく厳しい状況から政府の援助が必要で、31億ポンドのベーカールー線延伸を進める余裕はとてもない。
ベーカールー線とルイシャム駅
テムズ川の南側は、北側に比べて地下鉄の駅が少なく十分でない。ロンドン南東部から西に向かうには主要駅は混雑するし、不便なので自家用車を使う人も少なくない。
中心部にほど近いエレファントキャッスル駅からルイシャム駅へ南下させる計画は、それ以上延長させるプランもあるのだが、ベーカールー線延伸自体は、なんと1930年代から話題になっていた。ロンドン交通局によれば2019年の協議で約9000人のうち89%が支持したほどの計画である。
ルイシャム駅自体は、アビーウッド駅と同じ東ロンドンにありつつ、より中心地に近く、よほど開発が進んでいる。筆者はここにも滞在していたことがあるが、駅前にはモダンな高層フラットが並ぶ。
近隣の人気エリアに比べ手頃感があり、金融業界に勤める若者にも人気があると聞いた。アフリカ系の人が多いせいか、活気のある青空マーケットがあり、便利なショッピングモールもある。列車と無人電車のDLR、バスの要所で、足りないのは地下鉄の駅だけだ。