100年間、宙ぶらりんのロンドン地下鉄「延伸」 コロナの計画頓挫で行く末どうなる?
東京メトロ2路線の延伸が報道された日本・東京。鉄路延伸という大事業は、沿線のまちづくりに多大な影響をもたらす。19世紀に世界初の地下鉄を開通させた英ロンドンのケースはどうか。
イギリスの交通格差是正政策
海外ではどうか。
女王の在位70年に開通したロンドンの新線「エリザベスライン」が日本でも報じられた。2022年5月時点ではその計画の一部として、東ロンドンのアビーウッドから都心部のパディントンがつながり、この区間の移動時間が半分近くの28分に短縮された。
エリザベスラインは、最終的にはロンドンの東西118kmをつなぐもので、建設には190億ポンドがかかる見込み。これはロンドンオリンピック開催の2倍以上になる。費用は70%をロンドン市が負担(ロンドン交通局はロンドンの公共交通機関を担う地方行政機関)、30%を政府が負担した。
筆者は開通の前年に短期間アビーウッドに滞在したのだが、住宅街ではパーティーが開催され夜中も音楽が鳴り響き、日中はけんかの声が聞こえてくるようなところだった。周辺をくまなく見てはいないが、観光に行くような土地ではなく、モダンで美しい駅が不似合いというと言い過ぎだろうか。
イギリスでは、交通格差をなくすことと、交通が便利になった土地に生まれる経済効果が考えられていて、そのためのまちづくりという話は聞こえてこない。
2022年に入り、政府は格差是正の経済政策を表明。2030年までに地方の公共交通機関の便をロンドンのレベルに近づけることが言われている。