中国頼みのクルーズ船 インバウンド再開で「8割依存」の構図を変えられるか
コロナで浮かび上がった中国依存

大型クルーズ船を運航する企業各社では、マイナスイメージを払拭(ふっしょく)するために、コロナの感染対策には徹底的に力を入れるとしている。
手指の消毒やソーシャルディスタンスなど基本的な感染対策はもちろん、乗客のワクチン接種の確認やPCR検査の実施を徹底し、万が一感染者が出た場合の対応策強化にも取り組んでいる。とは言え、世界的に見ても新型コロナウイルスの感染拡大はまだ収束したとは言えず、不安に思う人は少なくないだろう。業界全体での厳しい基準づくりが期待されるところだ。
わが国は観光立国を目指しており、観光業を基幹産業として成長させていくことは国策になっている。2016年には訪日外客数について、オリンピック開催年までの目標は4000万人、開催後の目標は6000万人以上に上方修正された。
2019年のインバウンドは3188万人であった。目標実現のためには大量動員が可能な大型クルーズ船の寄港は不可欠である。しかし、コロナが収束してもリスクがなくなる訳ではなく、専門家は今後も定期的に世界的な感染拡大はおこると予見している。受け入れ側も日頃から十分な対策が求められる。
また、集客面では他にもリスクがある。クルーズ船の寄港回数、訪日クルーズ旅客数は2015年から2017年にかけて誘致プロモーションの活発化に伴って急拡大したが、2018年からはいずれも緩やかに減少している。2019年は対前年比で寄港回数は▲2.2%、訪日クルーズ旅客数は▲12.2%の減少となった。
これは中国へのクルーズ船の配船量が減少したことにより、中国旅客者が減少したことが大きな要因である。中国市場の急激な加熱によって相場が低下、調整期に入ったためとされている。クルーズ船は特に中国市場への依存が強く、その変動に大きな影響を受けると言える。
その一方で、中国や韓国は外交問題によって訪日旅客数が大きく変動することも珍しくない。リスクを回避して市場を安定させるためには、市場の分散を促進するとともに、
・ラグジュアリータイプ(10泊以上のクルーズ中心、400ドル/泊~)
の寄港を促進することも望まれる。
これからはプロモーションの強化とともに、リスクへの対応も強化していくことが期待されるだろう。