鳥取県知事が難色 特急「1時間に1本」自民県連政調会の提出案は一体どこが問題なのか?
智頭急行の現状
このダイヤ改変の提案の背景には、陰陽連絡鉄道の危機的な状況がある。
山陰の鳥取・島根両県と関西・山陽方面からの連絡は上記のほか、はまかぜ(大阪~鳥取)など複数あるが、メインとなっているのは、
・スーパーはくと(1日7往復、一部は鳥取まで)
・スーパーいなば(岡山~鳥取、1日6往復)
・やくも(岡山~出雲市、1日12往復、金・土・休日15往復)
だ。
このうち、スーパーはくととスーパーいなばは途中、第三セクターの智頭(ちず)急行線を経由して運行されている。
この路線は、国鉄時代に智頭線として建設が開始されたものの凍結。その後、「国鉄との直通特急列車を運行すれば黒字」との調査結果をもとに岡山・鳥取・兵庫の三県が出資し、第三セクターの路線として1994(平成6)年に開業したものだ。
欠かせない車両使用料
智頭急行線を走るふたつの特急のうち、スーパーはくとは智頭急行の車両を使用。スーパーいなばはJRの車両を使用している。
つまり、前者はJRから車両使用料を受け取り、後者は支払っている。この車両使用料が経営上欠かせない収入になっているのだ。
コロナ禍の影響が本格化する前の2019年度の決算では、営業収入は27億6302万1265円。うち、運賃収入にあたる旅客運輸収入は12億8629万6696円。車両使用料を含む運輸雑収は14億7672万4569円となっている。
最新の2021年度の決算では、
・営業収入:17億9987万362円
・旅客運輸収入:5億7556万8956円
・運輸雑収:12億2430万1406円
となっている。
智頭急行線は2019年度まで、黒字を22年連続で記録していた。しかしコロナ禍の影響は大きく、2020年度、2021年度は連続して赤字を記録している。
2021年度の特急列車の乗客数は2020年度比21.7%増の37万8868人となったものの、2019年度比では44.6%と半分以下だ。普通列車は依然として減少が続き、2020年度比8.7%減の18万5921人となっている。もしも、JR西日本から支払われる車両使用料がなければ、智頭急行線は維持できないのだ。