JR特急で「スーパー」「ワイドビュー」の名前をほとんど見かけなくなったワケ
平成に入ると在来線特急がスピードアップ

元号が昭和から平成に変わり、1989(平成元)年3月11日のダイヤ改正で、JR東日本・西日本が画期的な特急を世に送り出す。
前者は新型車両651系を使用したエル特急「スーパーひたち」、後者は既存の485系をグレードアップ改造した特急「スーパー雷鳥」だ。なお、エル特急は自由席付き、運転本数が多い特急列車を指していたが、2018年3月17日のダイヤ改正で廃止された。
両者に共通しているのは、
・インテリアのグレードが高い
・最高速度が時速120kmから時速130kmに引き上げた
ことだ。スピードアップをするには、車両の性能向上だけではなく、架線、信号、踏切などの改良工事も必要になる。
特に大半の路線で踏切が存在する在来線は、車両の非常ブレーキを掛けた際、600m以内に停止しなければならない。1968(昭和43)年から1989年まで在来線の最高速度が時速120km止まりだったのは、これをクリアできる限界の速度だったからだ。JR東日本は技術開発により、時速130km運転でも600m以内の停止が可能になったことから、651系を常磐線に投入し、取手~日立間で速度向上に踏み切った。
一方、JR西日本は踏切がひとつもない湖西線および、北陸本線の北陸トンネル内に限り、運輸省(現・国土交通省)の特例承認により、485系の時速130km運転が認められた。両列車の登場により、「スーパー」というフレーズが全国的に広まったと言える。
JRグループの旅客鉄道では、JR東海・四国を除く各事業者がスーパーを使った。このほか、一部の私鉄でも「最速達列車」という意味でスーパーが使われた。
JR東海は独自のワイドビュー

JR東海はスーパーの名がつく列車はないものの、スーパー的な列車が在来線に存在した。
1988(昭和63)年から1996(平成8)年までの在来線特急形車両は、側窓を大きく配置することで座席からの眺望がしやすいワイドビュー車両を投入した(気動車のキハ85系、電車の371系、373系、383系)。
社内では「ワイドビューひだ」「ワイドビュー東海」などの通称でPRしていたが、市販や駅の時刻表では単にエル特急「ひだ」などと案内していた。
1996年12月1日より、自社設計車両の特急列車をアピールする狙いなのか、特急「あさぎり」以外の在来線特急を「(ワイドビュー)ひだ」「(ワイドビュー)東海」などに改めた。
特急「あさぎり」が対象から外れたのは、当時、小田急電鉄と相互直通運転が行われていたからで、市販の時刻表では「JR東海ワイドビュー車両で運転」と記載されていた。