ドイツ脱線事故で4人死亡 元鉄道技術者が改めて感じた「プッシュプル列車」の構造的危険性

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2022年6月3日正午過ぎ、ドイツ南部バイエルン州のガルミッシュ・パルテンキルヒェン付近で、乗客約60人を乗せたミュンヘン行きのドイツ鉄道の快速列車が脱線した。9ユーロチケット施策におよぼす影響はあるのか。

ドイツで直近に発生した鉄道事故

現場付近航空写真。上方向がミュンヘン方面(画像:(C)Google)
現場付近航空写真。上方向がミュンヘン方面(画像:(C)Google)

 ここで、直近にドイツで発生した乗客が死傷した列車事故を振り返ってみる。

 2022年2月、バイエルン州ミュンヘン近郊のSchaftlarn(Schaeftlarn、シェーフトラルン)の単線の駅間にて、S-Bahn(近郊電車)同士が正面衝突した。この事故では、ひとりが死亡し、18人が負傷した。原因は、どちらか一方の運転手の信号見落としとのことである。

 2018年5月、バイエルン州にあるAichach(アイヒャッハ)駅にて、旅客列車が停車中の貨物列車に追突して、乗客ひとりが死亡し、13人が負傷した。原因は、信号係の人為的なミスにより誤った線路を指示したことと、係員の誤操作に対する機械的な安全装置が備わっていなかったことであった。

 2017年12月、ノルトラインヴェストファーレン州にあるMeerbusch(メアブッシュ)の駅間で、貨物列車と旅客列車が正面衝突し、47人が負傷、うち3人が重傷を負った。発端は、列車指令員が制御システムに入力する貨物列車の番号を誤り、かつ他の指令員もその誤りに気付かなかったこと。当時制御システムは、実際に線路上に貨物列車がいることから停止信号を示していたが、指令員は安易にシステムの故障と判断し、旅客列車を通常速度で進入させ、事故が生じた。

 2016年2月、バイエルン州Bad Aibling(バート アイブリング)の単線の駅間で、旅客列車が正面衝突し、12人が死亡、89人が負傷した。信号係が携帯電話のゲームに夢中になり、誤った操作をしたことが事故につながったとのことだ。

 直近にドイツで発生した列車事故は、正面衝突ならびに追突事故である。こうして列挙してみると、ハード面、ソフト面における安全対策に疑問の余地が残るとともに、鉄道のオペレーション自体に何らかの問題があるように思える。