地方でよく見る? 閉店したサービスステーションが「そのままの姿」で放置されている理由

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経営状態が良いにもかかわらず、サービスステーションの廃業が続出している。経営状態を冷静に分析し、早期に廃業するよう指導すべきだ。

経営者の高齢化と後継者不在

ガソリン給油のイメージ(画像:写真AC)
ガソリン給油のイメージ(画像:写真AC)

 廃業が増えているから残ったSS運営業者の残存利益を享受しているのは皮肉だが、では、なぜ経営状態が良いのに廃業が続出しているのか。SS運営業者には高度成長期に事業を開始したケースが多く、経営者の高齢化や後継者不在が問題になっている。

「SSは労働時間が長く、立ち仕事で、夏は暑く冬は寒い。時給を上げても、なかなか人が集まりません。先日もアルバイトがシフトに入ってくれず、仕方なく私ども老夫婦(ともに60代)が16時間も店に立ちました。それやこれやで、さすがに最近は商売が嫌になってきました」(中国地方の業者)

「息子がふたりいますが、ともに地元を離れていて、店を継ぐ気はありません。以前は、継いでくれないかなと思っていましたが、これから市場が消滅するビジネスを継いでくれとはいえませんよね。私の代でこの商売は終わり。今は廃業のタイミングを見計らっているところです」(中部地方の業者)

 つまり、SS運営業者は、競争環境の変化で経営状態が改善したが、

・経営者の高齢化
・後継者不在

によって、将来を悲観し廃業に踏み切っているようだ。

廃業したくてもできない

洗車のイメージ(画像:写真AC)
洗車のイメージ(画像:写真AC)

 ここで、

「いずれ廃業するというなら、さっさとすれば?」
「やめるだけなら簡単でしょ」

と考える向きがあるだろう。実際、すでに廃業した経営者も多いわけだが、SSの廃業はそう簡単ではない。

 廃業で問題になるのが、銀行借入金である。1990年代にSSの大型化、2000(平成12)年以降の消防法改正によって設備投資がかさみ、巨額の銀行借入金を抱えているSS運営業者が多い(消防法改正で地下タンクの入れ替えに数千万円の設備投資が必要になったことが、廃業増加の原因のひとつとされる)。

 廃業する際には、銀行借入金など負債を返済しなければらない。ここで、日本では経営者が銀行に個人資産を担保提供したり、債務保証をしたりしている。もし銀行借入金が保有資産の価値を上回っていると、廃業したら銀行借入金を返済できず、経営者は破産してしまう。

 また廃業するには、店舗設備を撤去しなければならない。SSの場合、特に問題になるのが、ガソリンや軽油を貯蔵する地下タンクだ。規模にもよるが、数百万円の撤去費用がかかる。もし地下タンクから油漏れが見つかったら、土壌改良をする必要があり、費用は1000万円を超える場合もある。

「近隣の同業者は、土壌汚染調査で油漏れが見つかったようで、もう何年も廃業できずにいます。借金もかさんでいるらしく、いつ夜逃げするのだろうかと業界内ではうわさになっています。ただ、私もそろそろ廃業したいので、ひとごとではありません」(北陸地方の業者)

 すでに閉店したSSがそのままの姿で放置されているのを各地で目にする。借入金返済や設備撤去費用がネックになって、廃業したくてもできないというSS運営業者が多いと推察される。

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