なぜ日本企業は「中国」から離れ始めたのか? 進出企業がピークから3割減! 自動車部品の現場で何が起きているのか――「中国撤退」だけでは見えない新たな生産地図とは
対中進出の日本企業が1万118社と過去最少へ急減し、一見「中国離れ」が鮮明だ。だが実態は撤退ではない。自動車部品などを中心に、地政学リスクを見据えて中国拠点の役割を絞り込み、他地域へ分散・再編する「機能の厳選」が進む。勝敗を分ける新たなグローバル生産地図の最前線を追う。
供給網の強靭化に向けた複数拠点化

ベトナムなど東南アジアや日本国内へ拠点を移す「チャイナ・プラスワン」や国内回帰の背景には、サプライチェーンの運用の考え方に大きな変化がある。
自動車部品産業は長年、トヨタ自動車の豊田喜一郎氏らが確立した「カンバン」方式に代表されるように、在庫を持たず、極限まで無駄を省くジャスト・イン・タイム(JIT)方式を採用してきた。しかし、1997(平成9)年のアイシン精機工場火災や東日本大震災、さらに近年の米中対立やコロナ禍による部品の途絶によって、余裕を持たない仕組みの弱さが明らかになった。今は万が一に備えて安全在庫と複数の調達先を持つジャスト・イン・ケース(JIC)へと移行し、供給網の強さを保つことが大きな課題となっている。
とはいえ、中国には長年の投資によって築かれた部品メーカーや素材、物流の巨大な集積があり、安定して調達できる環境として依然重要だ。そのため、既存の中国拠点を維持しながら、ひとつの部品につき代替の供給元を常に持つルールを設け、他国にも生産能力を広げる選択肢が生まれる。移転費用の最大3分の2を支援する日本政府の補助金を生かした国内回帰も、その一環といえる。
これは中国の事業をゼロにする撤退ではなく、依存度を下げる動きだ。生産や調達、開発といった機能を複数の地域に分け、リスクを分散させる。経済安全保障を視野に入れた「機能の分散」こそが、現在の変化の本質である。