なぜ日本企業は「中国」から離れ始めたのか? 進出企業がピークから3割減! 自動車部品の現場で何が起きているのか――「中国撤退」だけでは見えない新たな生産地図とは
対中進出の日本企業が1万118社と過去最少へ急減し、一見「中国離れ」が鮮明だ。だが実態は撤退ではない。自動車部品などを中心に、地政学リスクを見据えて中国拠点の役割を絞り込み、他地域へ分散・再編する「機能の厳選」が進む。勝敗を分ける新たなグローバル生産地図の最前線を追う。
生産基地から消費市場への機能厳選

中国の位置づけも「世界の工場」から変わった。売上高1億円未満の企業の割合が低下する一方、10億円以上の中堅・大企業の比率は上昇している。中国が低コストで生産できる場所から巨大な消費・物流市場へと性格を変え、高度な経営資源を持つ企業へ集約されていることを示す動きだ。
安く作る拠点として見れば、人件費の上昇が負担になる。それだけでなく、不動産不況による景気停滞、国有企業などへの過剰な補助金が生んだ現地企業との低価格競争、改正反スパイ法、さらには官製メディアによる外資への批判といった複合的なカントリーリスクも重くのしかかる。
自動車産業にとっては、次世代車に欠かせないレアアース(希土類)の輸出制限など、資源を使った経済的な威圧行為も大きなリスクになりかねない。かつて鄧小平が
「中東には石油があるが、中国には希土類がある。中国は希土類で優位性を発揮できるだろう」(1992年)
と豪語したように、電気自動車(EV)のモーター性能を左右するジスプロシウムなどの重希土類は中国が供給の大部分を握る。2010(平成22)年の尖閣諸島沖事件で事実上の禁輸措置を経験した業界にとって、このリスクは常に意識せざるを得ないものとなっている。
こうした環境下では、部品の拠点戦略も大きく変わる。日本向けの部品を輸出する目的で生産する場合は、リスクを避けて他国で作る選択肢が浮上する。しかし、中国市場向けであれば、現地に付加価値の高い製造や販売、研究開発を置くこと自体に意味がある。
拠点の整理には、閉鎖や統合だけでなく、機能集約や分散などいくつもの選択肢がある。上海の工場を他国へ移しても、販売や調達の機能は残すかもしれない。進出企業の減少は、中国市場を戦略的に生かすために機能を厳選した結果ともいえる。