「鉄道のない空港」静岡空港、なぜANA撤退でも注目が集まるのか? 国内2路線を失う一方で何が起きているのか――地方空港で変わり始めた「使われ方」とは
小型機が生む地方路線の採算性

国内線に目を向けると、ANAの2路線は9月末で姿を消すものの、入れ替わるように鈴与グループが立ち上げたフジドリームエアラインズ(FDA)が、2026年12月9日から23日にかけて静岡~那覇のチャーター便を運航する。将来の定期便化に向けた需要検証としての意味合いを持つ動きだ。
同じ区間でANAとFDAが運航していた静岡~新千歳便のデータを比べると、実績の差は明らかだ。2026年8月の搭乗率は大型機・中型機を用いるANAの58.4%に対し、FDAは75.9%を記録している。この差は、運航する機材規模の適正化に起因する。
FDAが導入する座席数50~100席程度の小型リージョナルジェット(エンブラエル170等)は、低騒音や短距離離着陸性能を備えるだけでなく、損益分岐点となる絶対的な乗客数が少なく済む。そのため、地方空港の限られた需要規模に合致しやすい特徴を持つのだ。今後、小型機材による運航で採算ラインを形成し、7割以上の高搭乗率を維持できれば、大手航空会社に頼らずとも収益性の高い安定した路線網が構築できる。
一般利便性の観点でも動きがある。2026年4月に駐車場へ車両ナンバー認証システムや事前精算が導入され、路線バスでのクレジットカードタッチ決済対応が進むなど、アクセスインフラの質的改善が図られている。
加えて、特定の顧客層への特化に向け、静岡県は2026年3月に「富士山静岡空港ビジネスジェット・スカイベース戦略」を策定した。年間発着回数8000回、駐機数100機の受け入れ拠点化を目指す野心的な計画だ。
富裕層や企業役員等が利用するビジネスジェットは、日本の主要空港では
・高い施設利用料
・煩雑な手続き
が障壁となってきた。だが静岡空港では、専用受付やVIPルームを備えたビジネスジェットターミナルや専用格納庫を活用し、人目につかない迅速な移動環境を提供する体制を整えている。利用者はハイヤーやヘリコプターなどによる点対点移動を好むため、鉄道がないという従来の弱点は相殺されるのだ。