ソフトバンクG出資の配車サービス「Grab」はいかにして東南アジア最大のシェアを誇るようになったのか

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東南アジア最大のスーパーアプリ「GRAB」が急成長している。顧客ニーズにマッチしたアプリ開発と、徹底的なローカル戦略が功を奏した。

なぜここまで成長したのか

位置情報で利用者、ドライバー双方がどこにいるのか一目でわかり使いやすい(画像:Grab)
位置情報で利用者、ドライバー双方がどこにいるのか一目でわかり使いやすい(画像:Grab)

 東南アジアでGrab社が急成長した背景としては、「顧客ニーズにマッチしたアプリ開発」と「徹底的なローカル戦略」の2点が挙げられる。

●サクサク使いやすいアプリ

 海外でタクシーを利用すると、日本のようにスムーズには行かないことがよくある。渋滞でなかなか来なかったり、道を詳しく知らなかったり、英語が全く通じなかったり、法外な値段を請求されたりすることも日常茶飯事だ。めったにないが、人気のない場所に連れていかれたりと、治安の面でも不安要素があり、乗車中も気が抜けない。

 Grab社は、これらのストレスや不安要素をすべてひとつのアプリで解決した。アプリでまずは目的地を入力すると料金とルートが表示され、利用者は料金を確認し了承してからタクシーを呼ぶ。呼んだ後も

「ドライバーが到着するまでにどのくらいかかるか」
「今どのルートを走っているか」

ということまで確認できる。呼び出した後に、ボタンひとつでキャンセルも可能だ。これらの「目的地を選んで、呼ぶだけ」の使い勝手のよさが、東南アジアで同アプリが急速に広がった理由のひとつに挙げられる。また、東南アジアでは、出張や旅行の際の領域内移動が多い。国が変わってもほぼ同様の操作でGrabが利用できる点も、利用者にとっては便利なのだ。

●徹底的なローカル戦略

 そしてもうひとつの成功の要因は、Grabが掲げた「ハイパーローカリゼーション戦略」だ。東南アジアは、地域ごとに宗教や文化的背景、経済発展度合いなどが大きく異なる。それぞれの国の特性に合わせて、徹底的なローカル戦略を展開したことが功を奏した。

 バイクが主な移動手段であるベトナムではGrabBike、マニラでは高級車シェアライドサービスのGrabCar+、カンボジアでは三輪車が呼べるGrabTukTukをそれぞれ立ち上げた。そして、東南アジアのほかの国でもニーズがあればスピーディーにスライド展開していった。

 Grab社は世界展開をせず、あえて東南アジアに対象を限定し、それぞれの国の文化や国民性を把握した上で使いやすいアプリと徹底的なローカル戦略を貫いた。結果、今日の成功に至ったのである。

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