なぜ「鉄道駅すらない街」が6年連続1位なのか? 「住み続けたい」と選ばれた神奈川県南東部の正体
最新ランキングが示すこれからの街

人口が減りゆく時代の街づくりでは、新たな住民をどれだけ呼び込めるかと同じくらい、いま暮らす人々がなぜその街を離れないのかが問われている。大東建託(東京都港区)が2026年9月2日に発表した「いい部屋ネット 街の幸福度&住み続けたい街ランキング2026<神奈川県版>」(県内在住の男女6万3776人対象)によると、神奈川県南東部に位置する三浦郡葉山町が「住み続けたい街」で6年連続1位となった。2位は鎌倉市、3位は逗子市だった。駅別では、鵠沼海岸が1位、横須賀が2位、みなとみらいが3位となっている。
19世紀以降、都市は郊外へ広がり続けてきた。ただ、市街地が無秩序に広がると、日々の生活を自家用車に頼る社会につながる。広い道路やインフラの維持費が財政を圧迫し、車を持たない人は移動の自由を失いやすくなる。環境への負荷も増す。こうした問題を、現代の都市は抱えている。
こうした限界への反省から、現在の都市と移動のあり方は大きくふたつの方向へ向かい始めた。今回のランキング上位の顔ぶれには、その変化が色濃く表れている。
一方は、みなとみらいや馬車道のような地域だ。駅周辺に住宅や商業、業務機能を集め、歩行者を優先し、車を必要としない公共交通指向型開発のひとつの形といえる。もう一方は、葉山や鵠沼海岸のように、海や山、地域文化と調和しながら、鉄道網に過度に頼らず暮らす自立分散型の生活空間である。
ここから見えてくるのは、街の価値を「目的地へどれだけ早く着けるか」という速さだけで測ることの限界だ。これまで交通インフラは、地点と地点を効率よく結ぶことを重んじてきた。しかし今回の結果が示すのは、
・移動時間そのものへの満足
・地域を巡ることで得られる体験
が、日々の暮らしの豊かさにつながっている実態である。巨大なターミナル駅を軸に都心へ直行する移動から、地域内を巡りやすく、心地よく過ごせる環境を重んじる視点へ。交通が果たす役割は広がっている。その街でどんな日常を送り、移動も含めた暮らしをこの先も続けたいと思えるか。いま、それが問われているのだ。