なぜ今あえて「排気音」が求められるのか? 約10万円で「バンバン」「バリバリ」! マフラーからECUへ「音カスタム」の主役交代
環境規制下で脚光浴びる排気音演出

アクセルペダルから足を離した途端、バンバンバリバリと響き渡るエキゾーストノート。海外ではポップ&バングとも呼ばれるこのバブリングが、環境規制の厳格化が進むなか、自動車のカスタム市場で新たな商機を生み出している。一見すると昔ながらの爆音カスタムに思えるこの現象が、なぜいま新たな収益源となっているのだろうか。
その技術的なルーツは、世界ラリー選手権(WRC)やF1などの競技用車両に搭載されたアンチラグシステムに遡る(スバル「ミスファイアリングシステム」、三菱「二次エア供給システム」、トヨタ「フレッシュエアシステム」などとも呼ばれる)。
過給エンジンでアクセルを戻した際に生じるターボラグをなくすため、意図的に点火時期を遅らせたり、失火させたりして、未燃焼ガスを排気管内で再燃焼(後燃え)させる。その爆発エネルギーでタービンを回し続ける仕組みだ。このとき副産物として生じる乾いた強烈な破裂音こそが、バブリングサウンドの正体である。
かつてWRCのグループA規定には、市販車に純正装着されていないシステムは競技用車両でも使用できないという厳格なルールがあった。そのため、スバルのインプレッサWRX STi(GDB以降)や三菱のランサーエボリューション(CE9A以降)、トヨタのセリカGT-FOUR(ST205)などの市販車には、エンジンコントロールユニット(ECU)プログラムによって機能が封印された状態で同システムが標準装備されていた歴史がある。
現代のストリートシーンにおけるバブリングは、こうしたモータースポーツ由来の魅力を受け継ぎながら、デジタル制御を使って法規制の枠内で楽しむ音の演出へと変化したものだ。電動化や電子制御が進み、馬力や最高速度といった物理的な性能だけで製品を差別化するのは難しくなっている。
自動車の価値は、物理的な出力だけでなく、走りの高揚感といった感覚的な体験へと移りつつある。バブリング市場の拡大は、消費者が自分ならではの感覚的な体験(経験経済)に進んで対価を支払うようになった消費構造の変化を色濃く映し出しているのだ。