なぜ「物流施設」が帰宅困難者の受け皿になるのか? 千葉豪雨で1万台超の放置車両! 受け入れ&物流機能をどう両立するのか――防災拠点に求められる運用条件

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首都圏で推計515万人を生んだ帰宅困難者問題。その新たな受け皿として、民間物流施設を一時滞在施設へ指定する動きが加速している。モノの通過点からESG時代の社会基盤へと進化を遂げる中、問われるのはインフラ途絶時の実効性だ。避難者の保護とサプライチェーン維持を両立させる稼働条件に迫る。

アメニティの裏に潜む設備面の死角

物流センターのイメージ(画像:写真AC)
物流センターのイメージ(画像:写真AC)

 物流施設を一時滞在施設として活用する場合、立地や空間、設備の実態を冷静に見極める必要がある。近年相次いで開発されている大型施設の中には、カフェテリアやシャワールームなど、従業員向けの設備を充実させた物件も多い。こうした設備があることで、急に人が集まった場合にも対応しやすいという利点が生まれる。

 具体例として、川崎市東扇島にあるかわさきファズ物流センターが挙げられる。首都高速湾岸線などの広域交通網に近い同センターは、防災センターによる24時間の有人管理体制を整えている。定期的に防災訓練を行うだけでなく、経営計画の中でも帰宅困難者用一時滞在施設としての指定を明確に位置づけている。

 だが、いくら施設が広くても、館内全域を滞在場所として開放できるわけではない。トラックバースや荷さばき場は、あくまで大型車両や重量貨物の移動を前提とした空間だ。温度管理や床面の安全性を考えても、人が過ごす場所へすぐに転用するのは難しい。結果として、受け入れられる場所は事務所棟の会議室などに限られるのが一般的だ。先に触れた豊海流通センターの面積規模にも、こうした構造上の制約が表れている。

 インフラ設備についても同じような問題がある。先の千葉豪雨では、東京電力パワーグリッドの蘇我変電所が水没した影響で、県内では約2万5000軒(うち蘇我変電所に起因するものが約1万5890軒)が停電した。さらに、大多喜ガスによる約1万3000戸の供給停止、千葉市内での水道管破損や下水処理施設3か所の機能停止など、生活を支える基盤が相次いで機能しなくなった。

 2025年に運用を始めたばかりの千葉市中央区の雨水貯留槽(25mプール約28杯分)も、想定を超える雨量で満水となった。設備を整えることに頼った防災対策には、限界があることも明らかになった。

 ここで注意したいのは、多くの物流施設に設置されている非常用発電設備の本来の目的だ。これらは主に冷凍・冷蔵設備や防犯設備を維持するために導入されている。そのため、広域のインフラが止まった非常時に、滞留者のための空調や照明へ十分な電力を回せるとは限らない。企業が備えている水や食料も、自社の従業員向けを前提としているケースがほとんどだ。外部の人に提供できる余裕があるかどうかは、事前に話し合っておく必要がある。

 加えて、庫内作業員の人数に合わせて整えられたトイレや給排水設備に大勢の滞留者が集まれば、すぐに衛生面の問題が生じる。設備があることと、十分な人を受け入れられることは別であり、実態に沿った厳密な確認が必要となる。

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