なぜ「電話派」を切り捨てない配車システムが生まれたのか? 配車依頼7割が電話! 静岡市の配車アプリはなぜ「電話」を残したのか
受電自動化を実現するAI配車基盤

一連の取り組みは、地方の交通事業者が業務最適化に向けてどう技術を活用すべきかを示す好例だ。利用者にアプリへの移行を促すアプローチがある一方で、根強い電話受付そのものをAIで自動化する技術も実用段階に入っている。
2026年3月、経済産業省と国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催する懸賞金コンテスト「GENIAC PRIZE」で、newmoと未来都によるプロジェクトが「カスタマーサポートの生産性向上」をテーマに第1位を獲得した。
受賞の決め手となったのは、AI音声配車システム「maido」の運用実績だ。1000台以上のタクシーを運行するnewmoグループでは、アプリ配車を導入後も電話依頼が大半を占める状態が続いていた。人手不足で電話の約3割を取り逃がす深刻な課題を抱え、さらにその4分の1を通院や福祉関連のエッセンシャルな移動が占めるという切迫した事情があった。
この課題に対し、「maido」はAIが直接電話を受け、乗降地や氏名を確認してシステムへ自動登録する仕組みを構築した。導入効果は大きく、取り逃がしを解消して「受電率100%」を達成。着信全体の45.5%をAIのみで完結させる成果を上げている。現在は大阪エリアの配車センターで24時間365日稼働しており、人間のオペレーターは複雑な問い合わせ対応に集中できる体制が整った。
交通拠点から目的地までのラストワンマイルにおいて、リアルタイムの配車マッチングやAIによる運行最適化は、コスト抑制と利便性向上に直結する。静岡市のように、利用者の約7割が電話手配に頼る地域では、機能を絞ったアプリでデジタル移行を促しつつ、並行して既存の受電チャネルをAIで底上げするハイブリッドな手法が、情報格差を埋める現実解となるだろう。
利用者向けのデジタル普及と、バックオフィス業務の自動化。この両輪が噛み合ってはじめて、持続可能な地域の移動インフラが形作られていくのだ。