なぜ自動車メーカーは「脱レアアース」へ動くのか? 対日輸出が5割減! 世界が注目する脱依存技術の行方とは
中国が市場の約90%を握るレアアースの供給リスクが完成車生産を揺さぶる。対日輸出5割減の打撃を受け、自動車産業は確保から脱依存へ舵を切った。2036年にEV市場の30%を占めると見込まれる希土類フリーモーター開発の最前線と、技術・調達・循環が織りなす新たな生存戦略に迫る。
生産ラインを直撃する供給集中リスク
EVの駆動用モーターをはじめ、オイルポンプや各種センサーに用いるモーターには、強力な磁力を生み出すネオジム磁石が使われている。耐熱性を高めるため、ここにはジスプロシウムやテルビウムといった重希土類が配合されている。これら部材の調達状況は、自動車メーカーにおける生産ライン全体の稼働へ直接影響を及ぼす。
2025年4月、中国がレアアース7品目の輸出管理を導入して貿易をライセンス制へ切り替えた際、審査手続きの停滞によって各国の供給網に遅れが生じた。欧州市場では発表からわずか1か月でジスプロシウム価格が1kgあたり850ドルへと3倍に跳ね上がっている。
欧州自動車部品工業会(CLEPA)の集計によれば、同年5月時点で申請の承認率は約4分の1にとどまり、フォードがシカゴ工場でスポーツタイプ多目的車(SUV)の生産を、スズキが主力車種の生産を一時停止する事態に陥った。
在中国欧州連合(EU)商工会議所の調査では欧州企業の3社に1社が調達先の変更を検討し、売上高の最大20%に及ぶ影響を見込む企業も現れた。中国側は同年12月に一般ライセンスの発給など運用を見直したものの、第三国流通への域外適用規定は残されたままであり、2026年1~6月の中国から日本向けレアアース輸出量は前年同期比5割減に落ち込んでいる。
従来の自動車メーカーはTier1サプライヤーを通じた部品単位の調達を主としていた。しかし上流プロセスの変動が自社の生産計画を直撃した苦い経験から、供給網全体のリスクを自ら管理する動きを強めている。各国では官民が連携し、調達先の多様化、リサイクル技術の導入、そして素材自体の使用量を抑える開発を組み合わせた多層的な供給体制への移行が進む。