なぜ自動車メーカーは「脱レアアース」へ動くのか? 対日輸出が5割減! 世界が注目する脱依存技術の行方とは

キーワード :
,
中国が市場の約90%を握るレアアースの供給リスクが完成車生産を揺さぶる。対日輸出5割減の打撃を受け、自動車産業は確保から脱依存へ舵を切った。2036年にEV市場の30%を占めると見込まれる希土類フリーモーター開発の最前線と、技術・調達・循環が織りなす新たな生存戦略に迫る。

資源確保から脱依存へと向かう構造転換

日中関係イメージ(画像:写真AC)
日中関係イメージ(画像:写真AC)

 主要国の多くがレアアースの供給を中国に依存している。英調査会社IDTechExのデータによると、中国は世界の採掘量の約69%を占めるだけでなく、分離から精製、金属化、磁石製造に至る下流プロセスを一貫して担う。これらを合わせると市場の約90%を独占する状態だ。

 1990年代以降、環境負荷の大きい湿式製錬のコスト差を背景に欧米諸国が撤退した結果、この一極集中が固定化された。現在の需要増と輸出管理を巡る動きは、自動車メーカーの車両生産ラインの維持に直結する事態を生み出している。これにより、レアアース問題は原材料価格を抑えるという調達面にとどまらなくなった。

 効率重視のジャスト・イン・タイム方式から万が一に備える戦略的在庫保有へと考え方を改め、事業を途絶えさせないための経済安全保障における重要テーマへと位置づけが移っている。

 こうしたなか、調達網を分散させる動きと並行し、素材への依存そのものをなくす解決策が本格化し始めた。2026年8月、メルセデス・ベンツ・グループ傘下の英YASAは、重レアアースおよびレアアースフリーの電気自動車(EV)向け高性能モーター開発プロジェクトプロジェクト・レジリエンスを立ち上げた。英国政府の資金支援を受けるこの取り組みは、供給網の安定化と持続可能性の両立を目指す。

 ただし、代替素材を適用するには、モーターの出力性能、サイズ、効率、コスト、量産性といった諸条件をクリアしなければならない。自動車産業が資源を守る構造から資源への依存そのものを減らす構造へと幅を広げる展開と、その全体像を整理する。

全てのコメントを見る