川崎重工、世界初「舶用水素ボイラ」の基本設計を完了

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川崎重工業は2022年5月31日、クリーンなエネルギーである水素を燃料とする舶用水素ボイラの基本設計を世界で初めて完了したと発表した。

四つの特長

16万立方メートル型 液化水素運搬船のイメージ(画像:川崎重工業)
16万立方メートル型 液化水素運搬船のイメージ(画像:川崎重工業)

 川崎重工業(東京都港区)は2022年5月31日、クリーンなエネルギーである水素を燃料とする舶用水素ボイラの基本設計を世界で初めて完了したと発表した。

 本ボイラは、これまでの液化天然ガス(LNG)運搬船の建造で培った舶用ボイラの技術やノウハウと、当社が保有する水素燃焼技術のシナジーを活用して開発。既に実用化されている小型の陸用水素ボイラとは異なり、波の揺動や設置スペースの制限が伴う船舶特有の条件や運用面などを考慮した設計となっている。

 また、ボイラ内の重要部品である水素燃焼バーナは、2021年度に実スケールサイズで燃焼試験を実施し、従来の天然ガス焚きバーナより高いターンダウン比を実現した。高ターンダウン比とは幅広い運用が可能であること。バーナの性能として、定格燃焼量から安定した最低燃焼量までの運用範囲を示している。

 なお、本ボイラを搭載した液化水素運搬船の推進システムは、日本海事協会から基本設計承認(AiP)を取得済み。

 主な特長は次のとおり。

●水素の燃焼特性(高い燃焼温度、燃焼速度が速い)に配慮した火炉設計をしつつ、LNG運搬船で多数の稼働実績を持つLNG 燃料の舶用ボイラを踏襲した設計としたことで、従来と変わらない運用が可能。

●水素ガスタービンの燃焼解析などで培ったノウハウを生かした水素の燃焼技術により、船舶の推進機関として必要な広い負荷範囲の運転を可能としたことで、航行速度変更などの負荷変化に適応。

●舶用主ボイラとして要求される船舶の状況に応じた各燃料での運用パターン(水素ガス専焼、低硫黄燃料油専焼、同混焼)に対応。

●水素燃焼バーナは、天然ガス燃焼用として多数の実績があるバーナをベースに、水素特有の燃焼、特に焼損や逆火を防止する安全思想を取り入れ、安定的かつ安全に運用することが可能なように開発。

 本ボイラは、蒸気タービンプラントや燃料供給システムと組み合わせ、二元燃料推進システムとして大型液化水素運搬船に搭載される予定。航海中に液化水素を積載した貨物タンクから、侵入熱により自然発生した水素ガスをボイラに供給し、有効に推進燃料として活用する。

 今後は詳細設計・製作を行い、2020年代半ばに実用化を計画している大型液化水素運搬船に搭載し、水素社会の実現に向けて実証を進めていく予定だ。

 なお、エネルギー分野では温室効果ガス排出量削減の動きを受けて、従来の天然ガス焚きボイラから水素混焼または専焼ボイラへ燃料が転換する流れが予想されている。本ボイラの技術は、陸上設備に設置するガス焚きボイラにも応用できるため、熱電ソリューションとして大型ボイラを必要としている国内外の石油・ガス・化学工業を始めとする各種プラント向けに陸用水素ボイラの開発を推進する。

●舶用水素ボイラの仕様

数量:2缶/1隻当たり
蒸発量:70t/h(1缶当たり)
蒸気圧力:5.9MPaG
蒸気温度:530度
燃焼条件:水素ガス専焼、燃料油専焼、水素ガスおよび燃料油の任意混焼