なぜ日本人は「近場のお出かけ」を控えるのに旅行するのか? 猛暑で宿泊費30億円増! 暑さで変わる“出かけ方”の境界線とは
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酷暑がもたらす家計変化と生活防衛

2026年7月の東京都の平均最高気温は31.8度。平年値を1.9度上回った。8月も32.0度と見込まれ、平年より0.7度高い。ただし、前年ほどの記録的な暑さではない。平均最高気温は2025年と比べて7月が1.4度、8月が2.4度低く、8月の猛暑日は予報期間を含めて4日間にとどまる見込みだ。
それでも、平年を上回る暑さによって東京の家計消費支出は211億5100万円(7月が56億7800万円、8月が154億7300万円)押し上げられると試算されている。世帯当たりでは、今夏平均で月1569円の支出増となる。
帝国データバンクの調査内訳をみると、この支出増加は暑さから身を守るための消費に顕著に表れている。食料の支出増減額は全体で84億8100万円の押し上げとなった。その内訳は、外食(30億9100万円増)や、茶類・炭酸飲料などの飲料(28億8400万円増)、アイスクリームなどの菓子類(21億5600万円増)、弁当などの調理食品(17億1500万円増)、生鮮果物(9億1500万円増)、麺類などの穀類(1億5900万円増)がけん引している。
また、宿泊料(30億4200万円増)やパック旅行費(5億8800万円増)を含む教養娯楽が45億3600万円増加したほか、エアコンなどの家具・家事用品が42億6500万円増、理美容サービスなどのその他が32億900万円増となった。さらに、住居(設備修繕など)が21億7700万円、熱中症対策に関連する保健医療(医療サービスなど)が19億9700万円、交通・通信(タクシー代など)も19億1600万円それぞれ増加している。教育関連の増減はなかった。
一方で、すべての消費が増えたわけではない。食料の中でも生鮮魚介類(22億3500万円減)や乾物などの野菜・海藻(2億300万円減)への支出は減少し、調理機会の低下などから光熱・水道(ガス代など)も38億5900万円減少した。さらに猛暑による外出機会の減少から、女性用洋服や和服を含む被服及び履物への支出も15億7000万円減っている。
猛暑は人間の身体に限界という制約を課し、日中の歩行をともなう外出など、移動可能な時空間を極限まで収縮させる。結果として人々は、エアコンの効いた快適な家庭に引きこもり、調理などの熱を発するタスクを惣菜やデリバリーといった外部のサプライチェーンに依存するようになるのだ。
同時に、この過酷な暑さは今後もずっと続くと直近の苦痛を将来に過大投影してしまうバイアスがエアコン等の耐久財購入を衝動的に後押しし、将来の健康より、今すぐ火を使う調理から逃れたいというバイアスが中食への依存を加速させたともいえる。暑さは家計を刺激する一方、
「外へ出る機会を強力に抑え込む」
方向にも作用しているのである。この傾向は、国内旅行全体の数字からも確認できる。2026年4~6月の日本人国内旅行消費額は7兆5361億円で、前年同期比11.7%増。旅行者数も1億4958万人で、前年同期比3.3%増となった。
ここにはひとつの特徴がある。旅行する人が増えたというだけではない。宿泊旅行(6.4%増)の伸びが、日帰り旅行(0.1%増)を大きく上回っているのである。