なぜ日本人は「海外旅行」へ行かなくなったのか? もはや富裕層の趣味?――潜在需要1位なのに行けるのはわずか7%という厳しい現実

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海外旅行の潜在需要は15.5%と全レジャー首位を誇る一方、平均35万5600円に達する渡航費用や円安が重くのしかかり、実際の参加率は6.7%にとどまる。パスポート保有率が17%へと沈む中、市場は高額リゾートと近距離節約旅へ二極化。かつての大衆レジャーが変容を遂げる、観光経済の構造変化に迫る。

円安と価格変動が招く予約の二極化

海外旅行「2026年7月 人気国TOP5」(画像:令和トラベル)
海外旅行「2026年7月 人気国TOP5」(画像:令和トラベル)

 渡航への心理的な負担は、具体的な予約手続きの段階で初めて生じるわけではない。

 ソニー銀行(東京都千代田区)が2026年6月に実施した口座保有者5276人への調査によれば、海外旅行への意欲が高まっていると答えた割合は42%。わずか半年あまり前の2025年11月調査(68%)から、26ポイントも急落している。

 意欲が削がれる理由として最も多かったのは円安(為替相場)が気になるため(63%)であり、物価高(46%)がそれに続く。海外旅行を予定・検討している層ですら、その91%が為替レートや為替コストを意識していると回答した。円安は、具体的な計画を立てる以前の行くか行かないかの判断そのものに冷や水を浴びせている。

 消費者が慎重姿勢を強める一方で、供給側の値付けのメカニズムも変貌した。かつては旅行会社が航空券やホテルを大量に買い集め、格安のパッケージツアーとして市場に流通させるビジネスモデルが機能していた。

 しかし今は、需要動向に応じて価格が自動で変動するダイナミック・プライシングが主流だ。高い金額を支払える顧客を早期に囲い込む販売手法が定着し、あらかじめ安く設定されたツアー商品は姿を消しつつある。消費者は、早期に高額な予算を投じるか、直前に投げ売られる格安プランを探し回るかの二択を迫られる。

 これに輪をかけるのが円建ての燃油サーチャージだ。原油高のみならず為替変動リスクまでもが上乗せされる仕組みであり、本来は企業が負うべき為替リスクが消費者に転嫁されている。加えて、AIが弾き出す動的な価格設定は同じ日程・同じ体験なのに人によって価格が違うという不公平感をあおり、渡航への心理的ハードルを著しく引き上げる要因となっている。

 令和トラベル(東京都渋谷区)の旅行アプリNEWTのデータ(2026年7月実績)をみると、平均予算指数は2025年4月を1.00として1.30に達し、過去16か月で最高水準を記録した。その一方で、直前予約を狙うプランが全体の21.6%を占める現象も起きている。

 現在の海外旅行市場から中間層が完全に消滅したというよりは、

・旅行先
・予約時期
・予算のかけ方

が極端に分化していると見るべきだろう。この二極化を象徴するのが、燃油高や円安の影響をヘッジして予算を確保できた

「早期・高額予約層」

の動きだ。近年は日本の酷暑を避けるべく、単に涼しい気候を求めるだけでなく、移動を最小限に抑えて快適に過ごせるアジア・リゾートへの投資が目立つ。エアコン完備の巨大屋内施設が充実するシンガポール(前年同期比+93%)や、ウェルネス旅が人気のバリ(同+88%)、ビーチと高原避暑を組み合わせたダナン(同+52%)など、滞在の質に惜しみなく資金を投じる層が、市場の片翼を力強くけん引している。

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