なぜ日本人は「海外旅行」へ行かなくなったのか? もはや富裕層の趣味?――潜在需要1位なのに行けるのはわずか7%という厳しい現実
海外旅行の潜在需要は15.5%と全レジャー首位を誇る一方、平均35万5600円に達する渡航費用や円安が重くのしかかり、実際の参加率は6.7%にとどまる。パスポート保有率が17%へと沈む中、市場は高額リゾートと近距離節約旅へ二極化。かつての大衆レジャーが変容を遂げる、観光経済の構造変化に迫る。
渡航費高騰が示す家計負担増の実態

先述した費用の格差は、単なる目的地の違い以上の重みを持つ。
国税庁の令和6年分民間給与実態統計調査をひもとくと、給与所得者の平均給与は477.5万円。雇用形態別に見れば、正社員の544.9万円に対し、正社員以外は
「206.3万円」
にとどまる。年間35万5600円という海外旅行費用は、給与所得者全体の平均給与の約7.5%、非正規層に至ってはその約17.2%を食いつぶす計算だ。住居費や食費といった生活必須の支出を差し引けば、所得水準が低い層ほど資金負担の重圧は跳ね上がる。
見過ごせないのは、表面的な金額の高さだけでなく、支出の内訳も変質している点だ。現在の旅行費用には、
・燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)
・各国の空港施設使用料
・国際観光旅客税
・現地の物価高
など、個人の節約術ではどうにもならない項目が重くのしかかっている。同じ35万円を支払っても、現地のホテルや飲食といった実際の体験に割ける予算は以前より目減りしているのが現実だ。
金額の多寡だけでは説明しきれない心理的な変化も起きている。前述のレジャー白書2026が示す余暇活動への支出のゆとり感指数は、2023年の+5.5から2025年には-2.1へ急落した。同時に時間のゆとり感指数も-0.8を記録している。深夜便や乗り継ぎ便を駆使して費用を浮かせる手段はあるものの、時間的余裕すら失われつつある現状では、そうした手間のかかる行程を選ぶことさえ容易ではない。
まとまった資金と時間を要求される海外旅行は、余暇資源がひっ迫する中で真っ先に切り捨てられやすい。事実、仕事より余暇を重視する層の割合は、2024年に67.8%まで上昇したものの、2025年には66.3%への低下へと転じている。