なぜ日本人は「海外旅行」へ行かなくなったのか? もはや富裕層の趣味?――潜在需要1位なのに行けるのはわずか7%という厳しい現実

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海外旅行の潜在需要は15.5%と全レジャー首位を誇る一方、平均35万5600円に達する渡航費用や円安が重くのしかかり、実際の参加率は6.7%にとどまる。パスポート保有率が17%へと沈む中、市場は高額リゾートと近距離節約旅へ二極化。かつての大衆レジャーが変容を遂げる、観光経済の構造変化に迫る。

希望と現実が乖離する海外旅行需要

海外旅行のイメージ(画像:写真AC)
海外旅行のイメージ(画像:写真AC)

 海外旅行に行きたいと望む人は決して少なくない。日本生産性本部の「レジャー白書2026 速報版」(2026年7月16日発表)によれば、海外旅行の希望率は22.2%にのぼる。だが、2025年に実際に海外へ渡航した人の割合(参加率)は、わずか6.7%にとどまった。希望率から参加率を差し引いた潜在需要は15.5%に達し、全108種目のレジャーの中で首位を記録している。

 この未実現の需要を生み出す最大の要因として、旅行費用と所得の乖離が挙げられるだろう。海外旅行の年間平均活動費用は35万5600円。国内観光旅行の13万200円と比較すると、実に2.7倍近い開きがある。とはいえ、この数字だけで海外旅行は

「富裕層の専売特許」

になったと結論づけるのは早計かもしれない。支出水準の上昇が中間層以下の参加を阻む一方で、市場構造そのものが根本的な変容を遂げている側面を見落としてはならない。

 実際のところ、海外旅行を希望しながら実現できた層は約3割(30.1%)にすぎない。対照的に、国内観光旅行は希望率62.6%に対して参加率47.7%を確保し、潜在需要は14.9%だった。国内旅行にも未実現の需要は存在するが、海外旅行ほどの深刻な乖離は見られない。

 両者の差は、航空運賃や宿泊費、現地での食費にとどまらず、為替変動コストや必要日数の長さが複雑に絡み合った結果といえる。

 加えて、消費者側の予算不足だけでなく、供給側の構造変化も拍車をかけている。限られた航空座席や現地の観光インフラをめぐり、日本発の需要は世界中から押し寄せる訪日外国人(インバウンド)需要と直接ぶつかり合っているのが実態だ。

 2024年の訪日外国人客数は約3687万人に達し(2025年は4270万人)、インバウンド消費額は国内アパレル市場に匹敵する8兆1395億円へと爆発的に拡大した。航空会社にとって、円安の恩恵を受ける購買力の高い外国人客へ座席を高値で販売するほうが収益性は高い。

 対照的に、日本人の海外渡航状況を出国人数の推移で見ると、需要の伸び悩みとインバウンドとの圧倒的な規模の差が浮き彫りになる。2003年に1330万人だった出国日本人数は、2004年に1683万人、2005年に1740万人、2006年に1753万人、2007年に1729万人と推移し、2008年(1599万人)や2009年(1545万人)に一時減少したものの、2010年(1664万人)以降は再び回復を見せた。その後も2011年(1699万人)、2012年(1849万人)、2013年(1747万人)、2014年(1690万人)、2015年(1621万人)、2016年(1712万人)、2017年(1789万人)、2018年(1895万人)と推移し、コロナ禍直前の2019年には過去最高の2008万人を記録した。

 しかし、パンデミックの影響により2020年に317万人へ急減し、2021年にはわずか51万人と底を打つ。以降は2022年に277万人、2023年に962万人と持ち直し、2024年は1301万人、直近の2025年は1473万人まで回復したものの、いまだにピーク時の4分の3にも満たない水準にとどまっている。4000万人に迫る勢いの訪日外国人客数と比較すると、現在ではトリプルスコアに近いほどの差が開いてしまった。

 結果として日本人向けの手頃な供給枠は後回しにされやすく、国内旅行には存在しない強大なインバウンド需要との国際競争が、希望と現実の乖離をさらに広げているのだろう。

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