これぞ「技術の日産」の神髄だ――無給油で1980km走破! e-POWERは“高速道路の本場”で勝利できるのか?
高低差が支えたギネス達成の舞台裏

日産は2025年9月、第3世代e-POWERを積むキャシュカイを欧州で発売しており、今回のコロンビアでの挑戦にも同じモデルが使われた。総走行距離の1980Kmは、日本の青森から鹿児島までを縦断する道のりに匹敵する。燃料タンクの容量は55Lであり、燃費に換算するとおよそ36Km/Lに達した。
同車種のカタログ燃費は22Km/L(WLTCモード)だ。計算上は給油なしで1200Kmを走れるが、今回の記録はその約1.6倍にのぼる。ここで基準となるWLTCモードとは、自動車の燃費や排出ガスレベルを世界的に統一して管理するため、国連欧州経済委員会が主導してまとめた国際試験法「WLTP」の中核をなすものだ。
通常、公道での実燃費はカタログ値より落ち込むことが多い。測定時に使われないエアコンやワイパーといった電装品の消費(オルタネーター負荷)が影響するためであり、元々の燃費性能が高い車ほど、このカタログ値との差が開きやすいという技術的なジレンマを抱えている。
しかし、今回のコロンビアでの走行では、実燃費がカタログ値を大きく上回った。その理由として見逃せないのが、ルートの高低差がもたらす効果である。出発地のボゴタは標高2640mの高地にあり、世界で3番目に標高が高い首都として知られる。
ここから海抜0mに近いカリブ海沿岸まで一気に下っていく道のりでは、回生ブレーキを頻繁に使うことができる。走行中の運動エネルギーを電力として回収しやすくなるため、結果として燃費が劇的に伸びたと考えられる。
日産は過去のテストでも、起伏の激しい過酷な環境を意図的に選んできた。2025年には、英国北端のジョン・オグローツから南西端のランズエンドまでおよそ1500kmを無給油で走り抜けている。さらに2026年の豪州タスマニアでのテストでも、アップダウンとカーブが連続する道のりで1300km以上の走破を実証してみせた。
こうした経緯を踏まえると、今回のギネス記録にはルートの高低差が味方した側面は否めない。それでも、空調を使い、勾配が変化する生きた道のりにおいて、e-POWERが極めて高い実用効率を発揮すると証明した意義は大きい。
では、なぜ日産は第3世代e-POWERの長距離走行性能をここまで熱心にアピールするのか。その理由は、このシステムの次なる主戦場が北米市場であるという事実と深く結びついている。