なぜ日本人は「海水浴」へ行かなくなったのか? ピーク時9割減の根本理由とは? 崩れ始めた“遠出レジャー”の前提
タイパ重視と近場レジャーへのシフト

もともと海水浴は、目的地に至るまでの負担が大きい。
水着やタオルに日用品、子どもの着替え、飲食物など、おびただしい荷物の準備をともなう。車を持たずカーシェアや公共交通を利用する層が増えた現在、こうした重くかさばる荷物の運搬作業自体が敬遠されやすい。
加えて、都市部から人気海岸へ向かうルートでは駐車場探しも悩みの種となる。自家用車が前提だった時代には日常の維持費に紛れ込みやすかったガソリン代や高速料金も、公共交通などを都度利用するスタイルでは移動ごとに明確に発生するため、出費がより重く感じられる構造がある。
以前であれば、夏休みというまとまった期間を利用し、家族や友人との遠出自体が特別な体験として消費されていたため、そうした労力を上回るだけの魅力が海には存在した。だが今、余暇の使い方は明確な転換期を迎えている。
先述のレジャー白書速報版によれば、2025年の余暇時間のゆとり感指数はマイナス0.8を記録し、2018年以来のマイナスに転落した。さらに余暇支出のゆとり感指数もマイナス2.1と悪化。プライベートを優先する余暇重視派の割合も、過去最高だった2024年の67.8%から2025年には66.3%へ低下しており、消費者のレジャーマインドそのものが冷え込んでいる様子がうかがえる。
時間と支出の両面で余裕が絞られるなか、生活者は投じた時間に対する効果、いわゆるタイムパフォーマンスを重視するようになった。日本財団の調査で海に行かない理由の変遷をたどると、2019年調査では日焼けしたくない、身体がベタつくといった物理的な不快感が上位だったのに対し、2024年には1位家から遠い、2位海に行く発想がない、3位時間がない、5位行くのが疲れるという結果になり、道中の時間や労力への忌避感が上位を独占した。日常の余暇の過ごし方として海に行くと答えた人が全体のわずか7%にとどまった事実も、これを裏付けている。
現代の消費者にとって、海は到着するまでのプロセスが煩雑すぎるため、そもそも休日の選択肢に浮上しない場所へと変わった。結果として、近場のプールや商業施設、全天候型の屋内レジャー、短時間で完結する体験へと需要が分散していく。