鉄道・高速バスともに貧弱 交通アクセス微妙な「ウーブン・シティ」が成功するためには一体何が必要か
商業施設が多い御殿場市
交通アクセスが不便というわけではないが、都会に出掛けるには、いささか難のあるエリアだ。東名高速道路上には高速バスの東名裾野停留所も存在するが、ウーブン・シティからは離れた場所にあり便数も多くない。こう考えると、都市の中は便利でも、普段の買い物や娯楽には不安を感じる。
ただ、これは杞憂(きゆう)に終わるかもしれない。なぜなら、裾野市の北部には御殿場市が位置しているからだ。
御殿場市は、御殿場アウトレットモールを始めとする大型商業施設やロードサイド店舗の集積した自治体として知られている。そのため、ウーブン・シティに住んでも車があれば問題なく生活できる環境が整うことになるだろう。
これまでの報道では、ウーブン・シティでは日清食品が「完全栄養食メニュー」を提供することも明らかになっている。これ自体は画期的な取り組みだが、日常の生活を営む中で食事が「給食スタイル」になれば、誰しも次第に我慢できなくなることは多くの事例で実証されている。ウーブン・シティに人が集まれば、それこそ、食材店や食堂を求める要望も高まるはずだ。
注目される岩波駅周辺の街づくり
そこで欠かせないのが、最寄り駅である岩波駅周辺の街づくりだ。
裾野市は2020年3月、ウーブン・シティと連動する形で20年後を想定したまちづくりの基本計画を発表している。この計画案でまず注目されるのが、岩波駅の交通結節点機能の強化だ。
計画では、駅前のロータリーを駅前交通広場として、バス・タクシー・自家用車が共存できるロータリーや駐車場などを設置。これにより、鉄道・バス・タクシー・自家用車・自転車など、あらゆる交通手段を利用する人の流れを整理することが図られている。
そして、駅周辺には都市機能を誘導するとされており、将来的には商業施設などを含んだ計画が進むと考えられる。岩波駅周辺は、矢崎総業を初めとした工場が多く立地しており、とにかく商業施設が少ない。スーパーマーケットもウーブン・シティから徒歩圏内には地場の「スーパーカドイケ」がある程度。あとは、セブン―イレブンとローソンくらいだ。
駅周辺の再開発において、商業施設にどの程度のスペースを割くことができるかが、ウーブン・シティ成功のひとつのカギとなるだろう。実験都市といえども、すべてを都市内部で供給することはできないのだ。