「結局、大手企業しか生き残れないのか?」 物流危機で広がる格差! 価格転嫁「27.3%」を分けた知られざる差とは
価格転嫁の成否を分ける原価活用

燃料費や人件費などの高騰が、物流業界全体を重く覆っている。発端は2024年4月に適用が始まった自動車運転業務に対する時間外労働の上限規制(年960時間)だ。これに加え、休息期間の延長や連続運転ルールの厳格化、月60時間超の時間外割増賃金率の引き上げ(50%)など、法規制による構造変化が重くのしかかる。
いわゆる「2024年問題」は、運送会社に業務量の縮小を強いるだけでなく、ドライバーの収入減をも引き起こしかねない。ただ、同じようにコスト高と輸送力不足の危機に直面しながらも、運賃改定の進み具合や経営戦略の柔軟性には、企業間で明確な差が開き始めた。
明暗を分けた根底にあるのは原価情報の扱い方の違いだ。アセンド(東京都新宿区)など5社が2026年6月に実施した共同調査(有効回答198社、2026年8月4日発表)によると、直近1年で運送原価が5%以上上がったと感じる企業は約9割(89.9%)に上る。その半面、上昇分の半分以上を運賃に転嫁できた企業は
「27.3%」
にとどまった。なぜこれほどの差が生じるのか。実態をひもとくと、単に原価を計算しているかではなく、その数値を
「交渉や経営判断の材料として使いこなせているか」
という壁が浮かび上がってくる。ドライバーの長時間労働に依存したビジネスモデルが限界を迎えるなか、適正な運賃設定は企業存続の要となる。とはいえ、荷主との交渉の席でコストが上がって苦しいと定性的に訴えるだけでは、十分な理解を得るのは難しいのが実情だ。
会社全体のどんぶり勘定しか手元になければ、特定の輸送案件でどれほど負担が増しているのかを示すことは不可能に近い。逆に、荷主やコース、さらには案件単位で原価を細分化して把握していれば、輸送条件とコストの相関関係を論理的に提示できる。
結果を左右するのは、自社の実態をどれだけ高い解像度で可視化できているか――という点に尽きるだろう。