「自動運転だから大丈夫」と思っていませんか? ドライバー90%が信じる安心感、その裏で変わる安全基準とは
先進運転支援システムの普及でモビリティ安全は新局面を迎えた。主要10市場の調査では、道路を安全と信頼するドライバーが約90%に達する一方、専門家は45%にとどまり深刻な認識ギャップが露呈。事故リスクの中心が機械の故障から人間の過信や誤解に移るなか、持続可能な発展に向けた解決策を探る。
次世代モビリティと信頼ギャップ

自動車の安全技術が大きな転換期を迎えている。衝突時の安全性やブレーキ性能といった機械そのものの性能向上が、これまでの中心テーマだった。こうした工学的な進歩のおかげで、移動の安全性は歴史上かつてない水準に達している。ところが、先進運転支援システム(ADAS)が普及するにつれ、安全を左右する要素は多様な広がりを見せ始めた。
それでもなお、世界では年間約120万人が交通事故で命を落とす。とくに5歳から29歳の若年層では死因のトップを占めており、事態は深刻だ。世界銀行のグローバル道路安全ファシリティ(GRSF)が試算した交通事故にともなう社会経済的な損失は、GDP比で英国0.56%、日本0.97%、米国3.30%、中国4.73%に上る。経済へ与える打撃も計り知れない。
こうした背景のもと、英メディアのエコノミスト・グループ傘下にあるエコノミスト・エンタープライズは、世界の主要自動車生産10か国で「Safety in Motion: Driving Trust in Modern Mobility(動き続ける安全性:現代モビリティにおける信頼を築く)」と題する調査を実施した。結果として浮き彫りになったのは、道路交通の安全性に対する認識のズレである。利用者である一般ドライバーとモビリティ分野の専門家との間に、大きな信頼ギャップが存在していたのだ。
技術が高度化すればするほど、拡張機能で何ができるかだけでなく何ができないかを利用者が正しく理解できる環境作りが問われる。ADAS時代の安全とは、一体どのようなものか。本稿では、技術と人間の関係性という視点から、新しい安全基準を社会に定着させるためのカギを多角的に読み解いていく。