「クルマが電気を届けます」 熊本地震で再注目? 最大11日給電の「電動車」は家庭の電源になれるのか
最大震度7を観測した「令和8年熊本地震」は、非常時の電力確保の難しさを浮き彫りにした。ここで真価を問われるのが、最大約11日分の給電力を誇るEVやPHEVだ。2030年に1028GWh規模へ達する蓄電池市場を背に、クルマは移動体から分散型電源へと変貌する。モビリティと電力の融合が拓く新しい産業地平を追う。
移動手段から非常用電源への転換

2026年7月28日夕方に発生した「令和8年熊本地震」は、停電や道路寸断などにより、私たちの生活基盤がいかに脆いかを改めて浮き彫りにした。災害による停電は、エアコンや冷蔵庫、スマートフォンといった電気機器の機能を奪う。水や食料の確保と並び、電力の維持は非常時における死活問題だ。
ここで改めて注目を集めているのが、
「電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)の給電機能」
である。車載バッテリーの電力を住宅や外部機器へ供給し、クルマを移動手段から持ち運べる電源として扱う考え方は、着実に社会へ浸透しつつある。
背景にあるのは、自動車産業における事業領域の拡張だ。ハードウェアの製造・販売から、移動可能なエネルギーインフラの提供へとシフトし始めている。車両が走っていない時間の資産価値にも光が当たり、モビリティと電力という異なる分野の融合が加速している状況といえる。
だが、クルマを買えば無条件にその価値を享受できるわけではない。Vehicle-to-Home(V2H)などの給電設備や住宅の仕様、地域の充電インフラといった複数の条件が揃って初めて機能する側面を持つ。
本稿では今回の地震を契機に、EVやPHVが担う「動く蓄電池」としての役割が今後どう社会に組み込まれていくのか。過去の災害時の活用例も交え、その構造的な広がりを読み解いていく。