「生活保護受給者は自動車を持つな」という暴論 制度的欠陥を改め、「健康で文化的な最低限度の生活」を確保せよ

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生活保護受給者に自動車の所有を認めるよう制度変更を求める声が批判にさらされている。ネット上にはネガティブな反応が多いが、自動車の所有が認められないのは制度的欠陥だ。

生活保護受給を諦めさせるもの

生活保護問題対策全国会議が作成した「自動車を持ちながら生活保護を利用するために!」(画像:生活保護問題対策全国会議)
生活保護問題対策全国会議が作成した「自動車を持ちながら生活保護を利用するために!」(画像:生活保護問題対策全国会議)

 法政大学の藤原千沙教授の研究によると、2015年の都道府県別母子世帯の世帯保護率では、世帯保護率が全国平均13.83%に対して、最も多い東京都は18.87%、最も低い富山県が0.61%だ。

 政令指定都市別では、京都市が35.48%なのに対して浜松市は8.15%で、公共交通が貧弱な地域では自動車所有が避けられないために、生活保護受給を諦めている可能性が強いことを指摘している(藤原千沙「地方における母子世帯の暮らしと生活保護ー自動車の保有・使用の視点から」『月刊自治研』59号)。

 こうしたなか、2021年10月には弁護士らでつくる「生活保護問題対策全国会議」が自動車を保有したままで生活保護を受給するための要点をまとめた冊子を作成し支援団体などを通じて配布している。ちなみに「自動車を持ちながら生活保護を利用するために!」でインターネット検索すると、リンクが出てくる。

 生活保護受給者の自動車の所有を認めれば、彼らが社会から孤立することを防いだり、生活を再建できたりする。そうであれば、もっと歓迎されるべきだと筆者は思う。繰り返しになるが、

「明日はわが身」

なのだ。

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