「生活保護受給者は自動車を持つな」という暴論 制度的欠陥を改め、「健康で文化的な最低限度の生活」を確保せよ

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生活保護受給者に自動車の所有を認めるよう制度変更を求める声が批判にさらされている。ネット上にはネガティブな反応が多いが、自動車の所有が認められないのは制度的欠陥だ。

自動車は「ぜいたく品」なのか?

路上に止められた車(画像:写真AC)
路上に止められた車(画像:写真AC)

 その後、家電製品など耐久消費財の所有が当たり前となるなかで、自動車はクーラーと並んで、生活保護世帯が所有すべきかどうかが議論されてきた。生活保護を受給する際に所有している家電製品などが

「生活用品なのか資産なのか」

厚生労働省の方針や各自治体の判断が極めて曖昧だったからだ。

 1994(平成6)年に毎日新聞が実施した「生活保護世帯の生活用品保有許可実態の全国調査」でも、当時の厚生省は自動車を

「身体障害者や山間・へき地に住む人」

などに限定していると解説。

 福島市では生活保護受給のために廃車させた事例があることや、群馬県では公共交通機関が未整備のため厚生省(当時)に方針の変更を求めていること、秋田県では現場サイドで自動車の所有を認めていることが記されている(『毎日新聞』1994年9月15日朝刊)。

 生活保護受給者に自動車の所有を認めるべきか否かは、近年始まった議論ではなく、方針が曖昧なまま、何度も問題が浮上しているものなのだ。

 1990年代には、生活保護受給者が兄弟から自動車を借りて運転していたところ、福祉事務所が

「自動車の所有・借用・運転は禁じられている」

として生活保護を打ち切った事例もある(『西日本新聞』1994年10月18日付朝刊)。近年ここまでひどい事例は聞かないが、それでも対応が改善したとは言い難い。

2010年以降、自治体の判断や裁判の結果、生活保護受給者の自動車保有が認められる例は増えている。状況は改善されているのだが、法律上は曖昧なままなのは制度の欠陥である。

 そもそも、自動車は「ぜいたく品」なのか? 違うだろう。

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