「サイドブレーキはどこへ消えた?」 搭載率64%に到達したEPB、自動車メーカーはなぜ標準採用を急ぐのか?
高級車から大衆車へ広がるEPBの普及

電動パーキングブレーキ(EPB)が、自動車市場で急速に普及を広げている。従来は高級車向け機能というイメージが強かったが、現在では軽自動車やコンパクトカーにも搭載車種が広がっており、自動車の標準仕様のひとつになりつつある。
その背景には、ドライバーの利便性向上にとどまらず、先進運転支援システム(ADAS)や電気自動車(EV)の普及、自動運転技術との連動性、さらには車内空間レイアウトの自由度向上など、次世代モビリティとの高い親和性がある。車種開発の基本構造においても、後付けの選択肢ではなく、構想の初期段階から組み込まれる標準構成部品へと位置づけが変化している。
従来のパーキングブレーキは、レバーを引き上げたりペダルを踏み込んだりすることで、物理的なワイヤーを介して制動力を発生させる機械式が主流であった。一方、EPBは電気モーターと電子制御ユニット(ECU)によってブレーキを作動・解除する仕組みであり、ブレーキ・バイ・ワイヤ技術の一種に位置づけられる。
構造としては、ディスクキャリパーに直接モーターを組み込むディスクブレーキ用と、ブレーキドラムと一体化したドラムブレーキ用に大別される。小型スイッチのみで操作できる点が大きな特徴であり、電子制御化によって車両システム全体との連携も容易になった。
かつては構造の複雑さやコスト面から、一部の高級車を中心に搭載されていたEPBだが、近年は電子制御技術の成熟と量産効果によって低コスト化が加速している。さらに、部品サプライヤーがシステム全体をモジュール化して供給する体制を整えたことで、軽自動車やBセグメント以下の小型車向けにはドラムブレーキと一体化した専用ユニットの実用化が進むなど、普及の裾野は急速に広がった。
360 Research Reportsの調査によれば、世界のEPB市場は現在、新しく生産される乗用車の64%以上に組み込まれるまでに成長した。また、OEMの57%が手動式から完全な電子ソリューションへの移行を進めている。この定量データが示す通り、EPBは一部の車種を飾る仕様から、グローバル市場の車両プラットフォームにおける一般的な技術基盤へと定着を遂げつつある。