島原道路「2.7km延伸」だけで満足してはいけない! あなたは「島原天草長島連絡道路」という壮大な計画をご存じか
- キーワード :
- 西九州新幹線, 島原道路, 島原天草長島連絡道路
2021年時点でも「机上のプラン」状態
この構想は1978(昭和53)年、鹿児島県が「鹿児島県総合計画」で長島~天草間に架橋建設を盛り込んだのが発端だ。
1986年には、熊本県がこれに加えて鬼池(天草下島)~口之津橋(島原半島)に架橋する構想を提案。1987年に開催された九州沖縄知事サミットで「島原・天草・長島架橋構想」の推進が確認され、同年には長崎県も長期構想として「島原半島~天草連絡システム構想」を示した。
これを受けて1988年には三県と地域住民による「島原・天草・長島架橋建設促進協議会」が発足。以来、推進大会は幾度も開催された。
1998(平成10)年に国が策定した「全国総合開発計画」では、東京湾口・伊勢湾口・紀淡海峡・関門海峡・豊予海峡とともに「海峡横断プロジェクト」として計画に盛り込まれた。
しかしこの計画は2008年に凍結。その後の2015年「国土形成計画」、2021年7月に国土交通省九州地方整備局が策定した「九州地方新広域道路交通ビジョン」でも、三県架橋は言及されているが、あくまで机上のプランの域を出てはいない。
九州の交通インフラは地域間の格差大
それでも架橋を求める動きの中で、構想は明確になっている。
いま三県で打ち出されているのは三県架橋を軸にした「九州西岸軸構想」だ。これは、長崎から鹿児島までを高規格の自動車道で接続することによって、新たな経済文化圏を形成することを目的としたものだ。
新幹線建設など整備の続く九州の交通インフラだが、地域間の格差は大きい。
九州新幹線は福岡市の博多駅から熊本駅を経由して、鹿児島中央駅を結んでいる。高速道路は、新幹線よりも少し内陸側を走る九州自動車道。大分県・宮崎県を走り鹿児島県に向かう東九州自動車道は、全通に向けて事業が進んでいる。もっとも、この道路も十分とは言えない。
九州の経済圏は福岡市を中心に成立しているが、東九州自動車道を利用して福岡市に行くのは遠い。そのため宮崎県民が福岡市に行く場合は、長距離バスを利用し、九州を横断して熊本県の新八代駅(九州新幹線)を利用することが一般的だ。
宮崎県は高速道路が開通してもなお、交通インフラが十分とは言えない。その高速道路すら存在しない島原半島・天草諸島などがいかに不便な地域か、多くを語らなくても理解できるだろう。