「トヨタ vs BYD」 2030年で変わる“世界一”の条件! 絶対王者に迫る中国勢、米国市場なき覇権戦略の行方とは
多極化する自動車市場の構造

かつて、自動車メーカーがトップに立つには、世界市場のおよそ2割を占める米国で販売を伸ばすことが絶対条件と見なされていた。米国は広大な国土を持ち、世界有数のクルマ大国であることから需要が安定しており、常に有望な市場の筆頭だった。米国での成功が、世界で認められる存在になれるかどうかの分水嶺として機能していたわけだ。
しかし現在では、その定説が徐々に崩れつつある。中国が世界最大の自動車市場へ成長し、中国政府がEVやプラグインハイブリッド車(PHV)を新エネルギー車(NEV)と位置づけて普及を後押しした結果、市場のEVシフトが急速に進展した。2025年の世界新車販売台数(約9568万台)のうち、中国市場は3割超となる3435万台を占め、1673万台にとどまる米国を大きく引き離して最大市場の地位を確立した。BYDはこの波に乗り、低価格モデルの拡充によってNEV市場で飛躍的な成長を遂げた。
さらに、新興国市場の急拡大も、世界一を目指す条件を揺るがす要因だ。インド、東南アジア、中南米などの新興国市場は合計で約1500万台規模に達し、単一国としての米国市場に匹敵するインパクトを持ち始めた。中東やアフリカも含めれば、新興国での需要は今後も伸びていく公算が大きい。
その半面、BYDの屋台骨である中国国内市場では、激しい価格競争や技術的優位性の縮小によって、販売の伸びに鈍化の兆しが見え隠れする。生産能力の余剰感も相まって海外市場の開拓は急務であり、これを背景に中国の自動車輸出は急激に拡大、2023年には世界最大の輸出国へ躍り出た。BYD自身の実績を見ても、輸出台数は2024年の約43.3万台から、翌2025年には前年比145%増の約105万台へと急成長を記録した。
中でも象徴的な地域が東南アジアだ。BYDをはじめとする中国勢はタイやインドネシアへ進出し、高い価格競争力を武器に日本車の牙城を崩しつつある。タイにおける日系メーカーの販売シェアはかつての8~9割から7割未満まで急落し、代わってBYDなど中国勢が2割超のシェアを獲得するに至った。
このように、中国や新興国を中心に自動車市場の構造は多極化への道を歩む。北米での成功を大前提とした時代は終わりを告げ、世界販売を支える市場の選択肢は大きく様変わりしている。