「中国系EV」が東南アジアで突如攻勢 一体何があったのか? 日系メーカーの挽回策に迫る【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(9)

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これまで圧倒的に日系メーカーの牙城とされてきたASEANでのEV市場だが、昨今、中国系メーカーの進出が報じられるようになってきた。今後の展開と日系メーカーの挽回策を占う。

中国EVメーカーが攻勢を強める背景とは

タイで良く売れている「ZS EV」(画像:MG)
タイで良く売れている「ZS EV」(画像:MG)

 それでは、なぜ中国系EVメーカーがASEANに攻勢を強めているのであろうか。いくつかの要因があると考える。

・中国系EVメーカーは基本的に国内がメインビジネスである。テスラやNIOを除いて、ほとんど海外に輸出しておらず、海外工場も有していない。しかし、国内競争も激しくなる中で、関税のかからないASEAN地域であれば、進出地域として適切と考えたのであろう。

・タイ政府は2030年に国産車の3割をEV化すると目標を掲げている。しかし、日系メーカーがまだEVに力を入れていないため、タイ政府、もしくはタイ政府系のタイ石油公社(PTT)とタッグチームを組めると判断したのではないか。これは、これまで日系メーカーがタイ政府とタッグチームを組んできたことの真逆である。

・リチウムイオン電池を現地生産しているメーカーはまだない。このため、タイ石油公社(PTT)と鴻海精密工業は、他社に先駆けて現地生産することで、電池価格を下げることができると判断したであろう。

・日系メーカーは、環境規制の厳しい、かつ販売の主要マーケットである米国、欧州、中国に主眼を置かざるをえず、ASEANに開発や投資を振り向ける余裕がないと考えた。

・インドネシアでは、まだEVの波は来ておらず、日系メーカーが見合わせている中で、参入のチャンスと考えた。

・中国系EVメーカーには量産経験があり、日系メーカーは躊躇している段階であるため、EVへ関心が高いタイとインドネシアに的を絞り、橋頭保として戦略的に取り組んだ。

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