「45秒に1人」命を奪う排ガス、移動は、もはや“健康リスク”になったのか? 2050年予測が突きつける、道路インフラの構造転換
世界の大気汚染都市ワースト10

かつて日本の都市部では自動車の排気ガスが主因の大気汚染が深刻な問題となっていた。1970年代以降、東京や川崎などで公害訴訟が起きる事態となり、例えば東京の板橋区大和町交差点周辺は大気汚染濃度が全国ワーストクラスを記録したこともある。
しかし、大気汚染防止法や自動車NOx・PM法、ディーゼル車規制条例などの厳格な排出ガス規制と環境対策の導入により、現在の大気汚染指数(AQI)は平常値で推移し、状況は改善された。この歴史的な克服事例は、局所的な道路改良や車両規制がもたらした初期の成果であり、現代の広域的な交通流管理へとつながる出発点である。
一方、急激な経済成長や都市化が進む世界に目を移せば、深刻な大気汚染に晒されている地域は少なくない。IQAirが2026年7月8日に発表した報告によると、汚染が深刻な都市ワースト10は、主にインドやパキスタンを中心とした南アジア地域などに集中している。
首位はロシアのクラスノヤルスクで、以下コンゴのキンシャサ、南アフリカのヨハネスブルグ、バーレーンのマナーマ、イスラエルのテルアビブ、インドのコルカタ、エルサレム、中国の成都、パキスタンのラホール、北京の順となる。
これらの地域ではモビリティの急増と都市構造のミスマッチが課題を生んでいる。クラスノヤルスクは石炭を燃料とするソ連時代の発電所や工場が多く、定期的に空気の質が悪化する。ヨハネスブルグは汚染物質を地表近くに滞留させる複数の気象条件が揃った結果であり、テルアビブとエルサレムには戦乱の影響が影を落とす。
このように各地の汚染は、固有の産業配置や地政学的動向、気象現象が複合的に作用して発生している。かつて日本が交差点単位の対策から環境改善を成し遂げたように、現代の道路産業も通行空間の確保にとどまらず、パークアンドライドや相乗り、共同集配システムなどを活用し、都市全体の動線を最適化する広範な交通需要マネジメント(TDM)へ機能を拡張しつつある。
都市の持続可能な発展を支える基盤として、道路経済は交通効率化と環境負荷低減の両立へ歩みを進めているのだ。