「やっぱりトヨタの選択は正しかった…」 タコマ36億ドル投資で動き出す、北米クルマづくりの大変化とは?
トヨタによる米国への36億ドル投資と主力車種の移管は、北米供給網の地殻変動を物語る。USMCA見直しにともなう中国製部品への規制リスクや、メキシコの労働時間短縮によるコスト高騰が各社の前提を揺るがす。「安さ」から「強靭さ」へ。激変する環境下で始まった戦略的な最適配置の行方を展望する。
北米供給網の転換

トヨタ自動車は、米国で高い人気を誇るピックアップトラック「タコマ」の生産を約9年ぶりに米国へ戻す。テキサス州サンアントニオ工場に36億ドル(約5800億円)を投じ、新たな生産ラインを稼働させる計画だ。背景には、長年にわたって北米の自動車産業を支えてきた「メキシコで生産し、米国市場へ供給する」という効率性重視のモデルを変容させる市場環境が存在する。
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しやメキシコの労働制度改革が進むなか、自動車メーカーの拠点配置の判断基準は、製造コストの最小化という視点を超え、地政学的リスクや政策変更に耐えうるサプライチェーンの強靭化へと広がりを見せ始めた。米国生産への移行には投資負担の増大や雇用確保などの課題がともなうものの、この動きは北米自動車産業における
「米国かメキシコか」
という二者択一の議論を意味するものではない。経済安全保障と労働環境が激変する新たなフェーズにおいて、北米全体の供給ネットワークを持続可能な形へと拡張させていく連続的な変化の表れといえる。