「需要はあるのに、なぜ整備工場は消えるのか」 自動車整備の最前線、もはや“仕事があるほど苦しい”時代なのか? 約4割増えた撤退が映す、新たな現実
堅調な整備需要の裏で、2026年上半期の自動車整備業の撤退は前年同期比約4割増の295件と過去最多を記録した。技術高度化への投資や価格転嫁に苦しむ小規模事業者がその8割を占め、「仕事はあるのに受けられない」構造的歪みが浮き彫りだ。地域の安全インフラ危機の深層と、次世代再編の行方に迫る。
交渉力の格差と地域インフラの危機

もうひとつの問題は、整備料金をめぐる交渉力の差である。
業界内では、部品類、オイル・油脂類、塗料などの価格上昇に加え、
・人件費
・設備維持費
の増加が続いている。帝国データバンクによると、損害保険会社から支払われる整備工賃を含む修理費用が上昇していることは業界にとって追い風となった。しかし、その恩恵を受けやすいのは、特殊作業やエーミングに対応し、工賃の引き上げを主張できる
「中堅・大手事業者」
だった。反対に、最新設備を持たない小規模事業者では価格交渉が難しく、採算割れを起こしやすい。ここで起きているのは、需要の有無ではなく、
「需要を利益につなげる能力の差」
である。そして、この小規模事業者の退出は業界内部だけの問題にとどまらない。
地域で車を安全に使い続けるための身近な窓口が減少し、カー用品店やディーラーでランプ切れなどの軽整備すら人手が足りず手が回らないことによる長期の整備待ちが発生している。
これは、自動車中心社会において移動を制約される高齢者などの「交通弱者」から足回りや時間を奪うことにも直結し、地域の安全インフラそのものが危機に瀕していることを意味しているだろう。