「街の本屋は、このまま消えてしまうのでしょうか?」 出版ディストピアが迫る流通改革、「4割赤字」から始まる出版サプライチェーン再編
直接取引拡大とルートの多線化

利益配分の見直しが進むにつれて、流通構造そのものも変化し始めている。これまでのネットワーク維持が困難になる中で、各企業の戦略にはすでに動きが現れている。
商流と物流を切り離し、状況に応じたルートを選択する動きはそのひとつだ。講談社やKADOKAWAといった大手出版社は、従来の取次ネットワークに依存せず、アマゾンなどの小売事業者や有力書店との直接取引を拡大している。これにより、配送ルートの多線化や分散化が進む。
さらに、長距離輸送の負担を削減する試みとして、各地域にオンデマンド印刷の拠点を分散配置し、消費地に近い場所で本を製造・配送する「本の地産地消」構想も具体化している。これは、大量に印刷して全国へ送るプッシュ型の運用から、実際の需要に連動して供給を行うプル型のサプライチェーンへと転換する取り組みでもある。
一方で、自社で物流網を補完する基盤を持たない中小出版社は、全国規模の共同配送網への依存度が高く、物流費上昇の影響を吸収しにくい。全国一律で書籍を届ける現在の流通網をいかに維持するか、取引形態をどう多様化させるかは、今後の業界内での協議に委ねられる。かつて出版を支える裏方とみなされることの多かった物流は、コストが価格形成に直結する局面を迎えたことで、出版ビジネス全体の競争力を左右する重要な要素へと変化している。
サプライチェーンの末端に位置する小売の現場でも店舗空間の見直しが進む。前述の帝国データバンクの調査が示すように、現場では単行本や雑誌の売り場を縮小し、1坪あたりの収益性が高いホビー領域などの非書籍ビジネスへ転換する動きが活発化している。
書籍の販売数量減少に加え、物流費やテナント賃料といった固定コストの上昇に対抗し、限られたスペースの収益力を最大化するための経営戦略だ。書店の減少、取次の赤字、出版社の利益圧迫、配送費の上昇は個別の事象ではなく、物流コストという共通の軸を通じて相互に連動している。