「街の本屋は、このまま消えてしまうのでしょうか?」 出版ディストピアが迫る流通改革、「4割赤字」から始まる出版サプライチェーン再編
配送費倍増にともなう書店経営の危機

「もう本は運べません」。トラック新法を受けた出版取次業界の言葉は、強い危機感を示すものだ。だが、問題の本質は物理的な配送能力の不足ではなく、従来の出版流通における利益配分構造が物流コストの上昇により維持できなくなった点にある(『日本経済新聞』2026年6月19日付け)。
前述のとおり、従来、書籍の定価は出版社約70%、取次約8%、書店約22%という配分で運営されてきた。この比率は長年にわたり業界の基盤として機能してきたが、適正運賃の確保を義務付ける新制度により、物流を担う取次や運送事業者が事業を維持するための権利と役割が明確になった。
物流費の上昇は産業全体の利益消滅を意味するのではなく、負担と分配のバランスを現代の市場環境に合わせて最適化する過程といえる。物流は費用の枠を超え、事業継続を左右する重要な経営資源としての位置づけを高めている。
市場の変容は以前から進行している。2026年7月6日に発表された、帝国データバンクの調査(企業概要ファイルや信用調査などを基に集計、2025年度業績は一部推定を含む)によると、2025年度の全国の書店市場は1兆円台を維持する見込みだが、2015(平成27)年度の約1兆4000億円から約2割縮小した。このペースが続けば数年以内に1兆円を下回る可能性もあり、2025年度には赤字書店が38.7%、減益を含めた業績悪化が69.7%に達している。2016年度以降、倒産や休廃業で退出した書店は累計610社に上る。
2025年度に前年度から増収となった書店の割合は13.8%に低下し、コロナ禍以降で最も低い水準となった。コミック売り場を集客の要とする書店では、『ONE PIECE』などの定番シリーズやアニメ化された『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』の貢献はあったものの、かつての『鬼滅の刃』規模の特需は生まれず苦戦が目立つ。広い売り場を維持するためのテナント賃料や、最低賃金引き上げにともなう人件費の増加が、販売数量の減少と相まって収益を圧迫している。
こうした需要やコスト構造の変化、電子書籍の普及、ネット通販の拡大に加え、物流コストの適正化がサプライチェーン改革を促している。出版業界は需要減少への適応と並行し、適正価格で物流を持続させる共通条件のもと、サプライチェーン全体の体制強化を進めているのだ。