「老後は駅近に住みたい」 高齢者はなぜ“移動しやすい街”を選び始めたのか? 3割以上が家賃を理由に住み替える背景とは
超高齢社会を背景に、シニアの住み替えが都市構造を動かしている。アットホームの調査では、引越し理由の最多は家賃(32.0%)だが、交通や医療へのアクセス、家族との近居を重視する傾向も鮮明だ。自動車依存からコンパクトシティへ、住宅と交通、MaaSが融合する新たな生活基盤産業の潮流をひも解く。
長距離移動を避ける居住地選択

シニアの住み替えを巡る議論では、家賃負担や高齢者の入居の難しさが注目されがちだ。しかし、今回の調査から浮かび上がるのは、住まい選びが移動手段や生活圏そのものを見直す行動へ変わりつつある可能性である。
アットホーム(東京都大田区)が、2024年3月~2026年2月の間に賃貸物件へ引越しを経験し、主体的に物件を探した65歳以上の男女460人を対象に実施したインターネットによるアンケート調査によると、引越し理由の最多は家賃の安い場所へ移る必要があるから(32.0%)であった。
一方で、公共交通が便利な場所に住みたいから(15.9%)、医療機関や買い物施設に近い場所へ移りたいから(12.2%)、家族の近くに住みたいから(11.5%)といった回答も一定数を占めた。住み替えの判断基準は、住宅費だけでは説明できない段階に入りつつある。興味深いのは、生活拠点そのものを
「移動しやすい場所」
へ近づけようとする傾向である。現在の住まいと家族が住んでいる場所の距離では、徒歩圏内が20.7%、車で30分以内が23.9%となり、比較的近い距離に家族が住んでいる傾向が見られた。さらに、引越し理由では
・公共交通
・医療施設
への近接性も上位に入っている。これは、移動手段を確保するよりも、長距離移動を必要としない生活環境を選ぶという発想とも読み取れる。高齢化が進み運転が困難となれば、駅やバス停、病院、スーパーなどへ徒歩や短距離でアクセスできる立地の価値は、今後さらに高まる可能性がある。