「EV一辺倒への警鐘」 16億台超の「既存車」が突きつける、新燃料シフトへの号砲
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ストック16億台の脱炭素化

2015年に採択されたパリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命前比で2度未満に抑え、1.5度未満を目指す目標を定めた。これに向けた脱炭素の議論は、新車を電気自動車(EV)に切り替える市場のフローに注目が集まりがちだ。だが、自動車産業の持続可能性を確保するには、世界の道路を走る約16億6000万台(2023年時点)の既存車というストックの低炭素化が欠かせない。
日本政府が掲げる2030年度までに2013年度比で46%削減(さらに50%削減を視野)という目標の達成にも、新車の電動化と並行して既存車の排出量を即座に減らす手段が求められる。そこで、保有車両の入れ替えにかかる時間を考慮し、既存のエンジンや給油インフラをそのまま使える
「ドロップイン燃料(合成燃料)」
への注目が高まっている。日本では乗用車の平均使用年数が13年を超え、保有資産の入れ替えには期間を要する。日本自動車研究所の試算では、2035年以降に従来車の販売を禁止するシナリオでも、2050年時点で乗用車の約4%に内燃機関車が残存する。車両の買い替え促進だけでは、短期間での大幅な排出削減は難しい。
次世代モビリティへの移行にあたっては、走行時の排出ガス規制にとどまらず、資源採掘から部品加工、輸送、販売、使用、廃棄に至る全段階の環境負荷を定量評価するライフサイクルアセスメント(LCA)の導入が進んでいる。
合成燃料は二酸化炭素(CO2)と水素を原料に製造する液体燃料だ。燃焼時にCO2を出すものの、製造過程でCO2を利用するため、LCAの枠組みで環境負荷を抑えられる。実際の削減効果は製造時の電力やCO2回収方法に左右されるため、サプライチェーン全体での排出量削減が焦点となる。
自動車メーカーが燃料の調達や製造プロセスにまで関与し、自動車とエネルギーの産業境界を越えた構造変化が起きているのだ。