【4人に1人が経験】「良かれと思って窓側」がなぜ揉める? 新幹線・飛行機で変わる“快適な席”の条件とは
未来の移動空間と利用者の判断

これからの移動空間のあり方をめぐっては、乗り物そのものの改良と、情報技術を活かした調整というふたつの流れが広がっていくだろう。心地よさを高めるためにすべての席を通路につなげるような座席配置の変更は、乗客数の大幅な減少と運賃上昇を招くため、一部の高付加価値なサービスに限られる可能性が高い。社会の交通基盤には、便利さを高めようとすれば別の負担が生じるという、複数の要素を両立させる難しさが常にともなっている。
一方で、AIを活かした状況に応じた座席の勧めや、混み具合に応じて価格を変えるダイナミック・プライシングは、より多くのサービスへ広がる可能性を秘めている。混むときは料金を高く、空いているときは抑えることで利用の集中を和らげる効果が見込める。ただし、この仕組みの導入にも課題はある。人は、他人と比べて自分だけが不利な料金を払っていると感じると不公平だと受け止める性質(不平等回避)を持つため、料金が変わる理由を分かりやすく伝えなければ、事業者は信頼を失う恐れがある。
こうした移り変わりの時期において、事業者が用意する選択肢はさらに多様になり、使い手が判断する場面は増えていく。ネット上の仕組みが過去の利用傾向や状況を学んで座席選びを支える一方で、最後の価値判断はひとりひとりに委ねられるだろう。
交通機関の形を変えるには多くの時間と費用が必要であり、短い期間で大きな変化を実現するのは難しい。そのため、次の移動でどの席を選ぶべきかという問いに決まった答えはない。使い手は、移動時間や座席配置、同行者との関係など自分が置かれた状況を踏まえ、自らの便利さと相手への配慮のバランスを考えながら適した座席を選ぶ必要がある。多様な移動手段をつなぎ、個人の便利さと社会全体の調和を目指すMaaSが広がるなか、事業者の選択肢拡大と使い手の選択が組み合わさることで、移動空間の価値は今後も変わり続けていくだろう。