【4人に1人が経験】「良かれと思って窓側」がなぜ揉める? 新幹線・飛行機で変わる“快適な席”の条件とは

キーワード :
, ,
約6割が支持する「窓側席」の裏で、25%が座席を巡る摩擦を経験している――。調査から、6時間以上の長距離や混雑度によって需要が通路側へ10%反転する実態が浮かび上がった。個人の最適な選択が全体の不利益を招くという移動空間の課題に対し、MaaS時代の事業者はどう応じるか。空間価値の行方に迫る。

時間と空間密度による需要反転

座席選び(窓側 vs 通路側)に関する実態調査(画像:エアトリ)
座席選び(窓側 vs 通路側)に関する実態調査(画像:エアトリ)

 使い手が座席に感じる値打ちは、ある条件を境に大きく変わる。飛行機で通路側を選ぶ人の割合は、乗る時間が「5時間以下」の場合は27%にとどまるが、「6時間以上」の長い移動になると37%へと10%増える。長い時間座り続けることが決まると、景色の満足感よりも気兼ねなく席を立てる便利さを重んじる傾向が強まるのだ。

 同じような変化は座席の広さや周りの環境によっても起こる。新幹線の「2列の席(D・E席)」で通路側を選ぶ人は22%だが、真ん中の席に他の人が座る恐れがある「3列の席(A・B・C席)」では32%へと増える。他人との距離をどれだけ保てるかという独自の空間(パーソナルスペース)への配慮は、移動中の心地よさに直結する。話をするほど近い距離(50cmから1.5m)や他人に入ってほしくない範囲(50cm Agra以下)に見知らぬ人が入ると、心理的な負担を感じやすい。自分の場所が狭められる恐れが高まるほど、使い手は自由に動ける環境を求めるようになり、時間や広さの変化によって座席の値打ちは変わっていく。

 こうした求める声の変化は、機内や車内の運用、車両の開発にも影響を与えている。長い時間の移動や席が詰まった配置では通路側を求める声が高まるため、事業者には座席配置の多様化や通路へ出やすい仕組みの広まりが求められる。

 今の仕組みはひとつひとつの席を選ぶ機能としては整っているが、座った後に起こる乗客同士の移動や譲り合いについては利用者の配慮やマナーに頼る部分が大きい。運べる効率を高めるために座席を詰めて配置すると、ひとりあたりの空間的なゆとりは小さくなる。みんなの乗り物には年齢や体の違いにかかわらず誰もが利用できるユニバーサルデザインが求められる一方で、大勢を効率よく運ぶことと個人の心地よい距離感の確保を両立させるのは優しくない。ネット上で前もって座席を選びやすくなったものの、当日の体調や気持ちのゆとりまでは完全に表せないのが今の姿だ。

 さらに、状況による心地よさの変化は、事業者にとって新たな価値を生み出す機会でもある。移動の時間や混み具合の見通しの情報を合わせることで、乗客が通路側を求める状況を前もって把握し、最も良い経路とともに座席の選択肢を勧める案内サービスの開発が進んでいる。自分の空間を守りたいという使い手の思いに応える取り組みは、周りのデジタルサービスと連携しながら移動体験の向上につなげられている。

全てのコメントを見る