なぜ川崎市は「横浜市営地下鉄」計画を受け入れるのか? 延伸含む1500億円規模の越境交通、採算見直しの行方とは
川崎市の費用負担と運行主体の位置づけ

一方、横浜市営地下鉄3号線(ブルーライン)「あざみ野~新百合ヶ丘間」延伸の建設費については、比較的はっきりとした負担の内訳が示されている。
横浜市が2019年に公表した横浜市高速鉄道3号線延伸(あざみ野~新百合ヶ丘)の事業化判断報告によると、補助の対象となる工事費と用地費は約1500億円である。その負担内訳は、出資金が300億円(20.0%)、国が385億円(25.7%)、地方自治体が430億円(28.6%)、借入金が385億円(25.7%)となっている。さらに、事業の効果や過去の鉄道整備の事例を踏まえ、横浜市と川崎市の負担割合は
「1対1」
とされており、川崎市の負担は約200億円となる見込みである。
運営面については、もともと横浜市営地下鉄を延ばす計画であるため、これまでの建設や運営で積み上げてきた技術や知見を生かす観点から、事業主体は横浜市交通局とされている。一方で、川崎市交通局はバス事業を行っているが、地下鉄を含む鉄道事業の経験は持たない。川崎市の立場から見ると、横浜市は隣の自治体というより、鉄道を運行する事業者に近い存在であり、JRや私鉄を呼び込む場合に近い考え方になる。
鉄道は、基本的に誰でも同じ運賃で利用できる公共交通である。横浜市民でも川崎市民でも、他の地域の住民でも、運賃や定期券代を払えば利用できる。高齢者向けの割引制度など一部の例外を除けば、特定の自治体の住民だけが使える仕組みではない。このため、川崎市側の区間で生じた収入は、赤字か黒字かにかかわらず横浜市に入る形となる。
なお、同じ地域を走る私鉄や第三セクターの鉄道が赤字になった場合、その自治体が補助を出すことは一般的である。だが、その事業主体が私鉄や第三セクターではなく隣の自治体である場合に、同じ形で補助を行うとは考えにくい。